1. 鳥切手の集め方
切手の集め方にはいろいろあります。
私は各人が好きなように集めればよいと考えます。
ここでは、見て楽しむことを前提に多くの種類の鳥切手をどのように集めるかをご紹介します。本格的なコレクターの目から見ると邪道と見られるかもしれませんが、私は自分が楽しめることを第一と考えたいと思います。こうしなければならないということではなく、予算や時間やご自分のいろいろな都合との兼ね合いで、無理をせずにできる範囲で集めてみるとよいでしょう。
*なぜ投資目的の集め方を説明しないのかしかし、私は私のやり方で集めても全く財産価値が無いとは思いません。未使用、使用済みにかかわらずきちんとした取り扱いを心がけ、正しい方法で保存し、その状態がよければそれなりの価値で評価される可能性はあります。ですから、できれば将来財産にもなりうるような注意深い取扱や保存方法を研究しておく意味は十分にあります。問題は私がここでそれを責任をもってご説明することができないということです。
もしあなたが切手を一つの財産または投資として、すなわち将来自分の切手をだれかに売ることを目的として集める場合には、いろいろと特別に注意しなければならないことがあると思います。どのような点に着目して、どのように集めるのか、そしてどのように保管して、売るときにはどのようにするかなどです。それらの点に注意して集めないとそれまでにいくら苦労して集めても全く価値が無いと判断されることにもなりかねないと思います。
なぜなら、切手に限りませんが、人々はものを買うときにはできるだけ安く買い、売るときにはできるだけ高く売りたいという気持ちがあります。
自分が大切に保管してきたと思った切手もいざ売る段になって切手商に持っていくと、自分が惚れ込んだ表のデザインの美しさなどには見向きもせずにいきなりピンセットで切手を裏返したり、電気にかざしたりして、ほとんどの人が気がつかないような裏の糊の部分にかすかな指紋がついているからと言い、「このようなものは売り物にならないから、どうしても買えというならカタログの半額だね」などといわれかねません。
私はその方面について十分な経験も知識もありませんので、ここでは自信を持って説明ができません。ですから、そのような目的で切手を集めたい方はぜひそのようなことに詳しい方に聞くか、その関連の本などを調べることをお勧めします。
2. どのように集めはじめるか
できるだけ多くの種類の切手をできるだけ経済的に集めるというのは、ある程度枚数がそろってくると伸び悩みになりますが、最初のうちはとても簡単です。
- パッケージもの(袋詰め)を買う
最も簡単なのは、鳥切手ばかりを何枚もセットにしたパッケージものを買うことです。国別になっているもの、未使用の切手ばかりを集めたもの、世界中の国の切手が詰められたもの等いろいろなものがあります。20枚位から300枚とか非常に多くの種類をいれたものがあります。これらのパッケージは、デパートの切手売り場でもあるでしょうし、個々の切手商でも扱っているところもあるでしょう。雑誌などの広告で出ている通信販売もありますし、最近ではインターネットでも買えます。最初のうちはこのようなパッケージものを求めるのは経済的でもあり、一度にたくさん集められますので非常に便利だと思います。私の経験では、中に切手でないものが混入されているとか、一部が切れているような破損切手が入っていることなどもありましたが、(使用済みのものでも)概してきれいな本物が入っていることのほうが多く、一つの袋に全く同じ切手が何枚も入っていることはありませんでした。信頼性はまずまずといえると思います。
偽物や破損切手を混入させて安くするのは一種の詐欺であり、論外ですが、これら袋詰めの切手が安いのには理由があります。それは、シリーズで出された切手の中で1〜2枚が欠けている様ないわゆる半端ものや、それぞれの国では使用済みの切手として一枚単位で売ると値段がつかない位安い切手などを取り混ぜているからです。しかし、見て、集めて、楽しむ限りにおいては全く問題になりません。
ここで、一つ注意しておいたほうがよいと思われますのは、鳥切手に限ったわけではありませんが、外国で発行される切手の中には、切手本来の目的である郵便事業に使用する為ではなく、外貨収入を稼ぐ為に、自国ではほとんど売らずに、ターゲットとして切手収集者の多い金持ちの国(日本など)に好まれるような図案を印刷したり、非常に変わった材質(プラスティックなど)の切手を作って、切手収集者に流す目的で発行をしているところもあるということです。これらは、その国で発行されていても本来の切手としての使命を果たしているとは限りません。仮に一部を自国で郵便事業のために消費していても、その発行量が自国の消費量をはるかに上回るような場合もあります。パッケージものには通常これらの「切手」も含まれています。ですから、安いのにはそれなりの理由があるわけです。
- 切手の展示会のようなところにいく
頻繁に、またはたまにでも日本以外の地方へ出かける機会をもてる方は、観光土産屋さんやもし時間があれば、地元の切手商を訪ねてパッケージものを求めると、それはずいぶん違った種類を入手することにもつながります。それほどよその地方へは出かける機会がないような方は、たとえば時たま開かれる切手展、バザーまたはそれに類した集会などで、多くの切手商が一堂に会するような催しに出かけることも、有効に集めることにつながります。そのような催し場では特別なパッケージものを安く売っていたり、テーマ別の切手を展示即売していたり、シリーズものをそろえて売っていたりいろいろです。展示されている切手を見ることも有意義なことはもちろんですが、自分の切手のコレクションと比較したり、整理の仕方まで勉強することもできます。
私が特にこのような催しに出かけることをお勧めするのは、切手商を見るいい機会だからです。
普通切手商はその経営者の人格にも依りますが、個別のお店に出かけていくと、入りにくかったり、入ってしまったら今度は出にくくて高いものを買わずには出られないことになったり、なかなか難しい人間関係の一面をいやというほど知ることになる恐れがあります。このような催し場では、切手に縁のなかったような一般の人を切手の世界へ招きいれるような効果も狙っていると思いますので、ただ見て回るようなことを何時間もしていてもいやがられないし、何といっても切手商を比べることができます。外国の切手のコレクションが多い店や、切手だけでなくコインなどのコレクションも多い店、テーマ別で鳥切手も豊富にそろえているところ、そうでないところなどそれぞれの個性を比較することができます。あまり自分の目的にあった切手をそろえていないような切手商には、将来訪ねていく必要がありません。また、店員や経営者の人格を見ることもできます。子供と見るとうるさがるような人、横柄な人、非常に気さくで買わなくても質問によく応えてくれる人、知識が豊富な人などこのような機会に「品定め」をしておきましょう。それが次項で上げているなじみの切手商を早く見つけることにもつながります。
- なじみの切手商をつくる
パッケージものである程度集まってくると、今度は新しくパッケージを買ってもほとんどの切手をすでにもっているということにもなりかねず、あまり効果的ではなくなります。展示会もそうしょっちゅう自分の町の近くで開かれるわけでもありません。
そういう意味では、ある程度切手がたまった次の段階としては、鳥切手を多く扱っている、気さくな切手商と仲良くなることです。いろいろな情報を教えてもらうことができ、場合によってはほしい切手を取り寄せてくれるかもしれません。将来高く売る秘訣のようなものを聞き出すのもよいでしょう。自分のコレクションを充実させていくアドバイスも得られるかもしれません。
- 切手帳(ストックブック)をもつ
切手を集めるときには、通常切手帳をもちます。切手帳は大小いろいろありますが、切手を格納しておくところの材質によって大きく二種類に分けられるのではないでしょうか。すなわち、セロファンの様に透明なものと、パラフィン紙のように不透明なものとがあります。それぞれ特徴がありますが、好きなほうで構いません。(台紙に透明なセロファンの様なフィルムが貼ってあるものは、切手をいれるときにいれにくく、切手に傷をつけることもありますが、注意して扱えば切手の全体がきれいに見ることができます。パラフィン紙をつかっているものは、格納した切手を良く見るのにはいちいち出して見なければなりませんが、一般に値段が安く大量に格納するような大型のものはほとんどこの形です。)最初はあまり小さいものを買うと、すぐにいっぱいになってしまいますから、パッケージもので始めるとすると、最初は200枚程度は楽に入るようなものが適当でしょう。
集めた切手を一定の方式で整理するときには昔は切手の裏にヒンジと呼ばれる薄い小さな紙を使ってアルバムに貼っていました。このやり方ではせっかくの切手を傷つけてしまいますので今はあまり歓迎されないでしょう。現在は、薄いプラスチックのようなフィルムに切手を挟んでそのフィルムをアルバムに貼ったりしているようです。特にどこかで展示したりしないのであれば、切手帳のままでも問題ないと思います。次第に切手の量が増えてきて、切手帳のなかであちこちと位置を移していくのも楽しみになります。
- カタログを準備する
ある程度切手の種類が集まってくると、それを系統的に整理する必要が出てきます。ストックブックにせよアルバムにせよ、国別に整理するのか、鳥の種類別に整理するのかなど好きなように整理していくわけですが、その時にカタログがあると大変便利です。切手のカタログは切手を集めたり、売買するときにおおよその価値を知るのにも役立ちますが、鳥切手のように特定の種類の切手を集めるときに、これから集めるべき切手の目標をきめるのにも役立ちます。日本の切手だけでも、別のところでお話ししていますが1994年までで113枚(種類)の鳥切手が発行され71種類の鳥が描かれています。あなたがもし、すでにこの内100枚ももっているのなら、日本の鳥切手を全て手中にすることも可能かもしれません。(それだけ豊富な資金面の裏付けが必要なのは言うまでもありませんが。)あと、これを集めれば全世界の鶴の切手を制覇できる。などという目標もたてられましょう。
世界中に切手のカタログはそれこそ山ほど売られていると思われます。日本でも日本郵趣協会などで一般的なものもかなり詳しいものも発行されています。しかし、鳥の切手に焦点をあわせて非常に便利なカタログという観点から見ると、私は日本ではまだ発行されていないのではないかと思います。
私のささやかな経験からはこの部屋で「鳥本」と呼んでいるStanley Gibbons社発行の"Collect Birds on Stamps, 4th Edition"は鳥切手を集める方にぜひもっていたほうがよいとお勧めする価値が十分にあるものと思います。この会社は、イギリスの巨大な切手商で、切手も売り、切手集めに必要な全てのものを売っているのではないかと思われるほど何でも扱っていますが、全世界の切手をカバーした同社の世界の切手カタログも有名です。鳥本はこの世界切手カタログに掲載された切手の内鳥を題材としたもので、鳥に詳しい専門家が編集に関与していますので、世界中でこれまで発行された全ての鳥切手について、その鳥の名前(英語と学名)が記載されています。もちろん各切手の使用済み、未使用切手の価値も記載されており、写真は白黒で全ての切手の写真があるわけではありませんが、相当豊富であると言えるでしょう。
この鳥本でもし難点を挙げるとすると、このカタログの発行周期が3年前後なので最新の切手がカバーされていないということでしょうか。