世界の鳥切手について
(1)鳥切手を発行している国
鳥本によりますと、 私の数の数え方が正確であれば、現在鳥切手を発行している(または過去に発行していた)国や地域は全部で322あります。この内例えば中国などは帝政時代と、現在の中華人民共和国と台湾(中華民国)を1つのCHINAとして分類していますので、これらを分けると336となります。
国勢社発行「世界国勢図会第7版 '96/97」によりますと、1996年6月現在で世界の独立国とその他属領・地域の合計は236です。
鳥本の分類における国や地域には既に無くなった国や、行政的に一つの独立地域と見なされていないような地域も含まれていますので、この数から見る鳥本の国・地域数が、現在正式に認識されている国や地域の数より多くとも妥当であると思われます。また、その数から判断すると切手を発行しているほとんどの国で鳥の絵柄の切手(いわゆる鳥切手)を発行しているように思われます。
なお、上記世界国勢図会に書かれている独立国で鳥本に載っていない、即ち鳥切手を発行していない国にはミャンマー連邦、エリトリア国、カーボベルデ共和国、ボスニア・ヘルツェゴビナ共和国、グルジア共和国、タジキスタン共和国、トルクメニスタン等がありますがミャンマーはビルマとしてボスニア・ヘルツェゴビナはチェコスロバキアとして、また、グルジア、タジキスタン、トルクメニスタンのCIS各国はソ連としてそれぞれ発行実績があります。それに鳥本でカバーされている時期の制限もあり掲載されていない可能性もありますので、現存するほとんどの国では過去に鳥切手を発行していると言い切ってしまってもそれ程大きな問題にはならないのではないかとさえ思われます。
(2)世界最古の鳥切手について
「日本の鳥切手」でもふれましたが、 鳥本が扱っている世界の鳥切手の中で一番古い鳥切手は西オーストラリア(Western Australia)で1854年に発行されたコブハクチョウの切手です。それに次ぐ世界で二番目に古い鳥切手はなんと日本で1875年(明治8年)に発行された“かり”、“せきれい”、“たか”の切手です。アメリカ合衆国では1869年にハクトウワシが出ている切手を発行していますが、鳥本の基準には合わないものと思われます。仮にアメリカのその切手を「鳥切手」と見なしても、日本の鳥切手は世界で3番目に古い発行となります。ちなみに日本の次、世界で三番目に古い鳥切手は1876年に発行したコロンビアです。鳥本の基準によるアメリカの最初の鳥切手は1938年です。
なお、鳥本によると1800年代に世界で鳥切手を発行した国・地域は下表のとおりです。
発行年 | 国・地域名 | 種類 |
---|---|---|
1854年 | 西オーストラリア | コブハクチョウ |
1875年 | 日本 | ヒシクイ?、セグロセキレイ?、オオタカ? |
1876年 | コロンビア | コンドル |
1879年 | グアテマラ | カザリキヌバネドリ(ケツァール) |
1888年 | ニューサウスウエールズ | エミュー、コトドリ |
1893年 | クック諸島 | シロアジサシ |
1894年 | ラブアン | セイラン |
1894年 | 北ボルネオ | セイラン |
1897年 | 清帝国 | ヒシクイ |
1897年 | ニューファンドランド | カラフトライチョウ(ヌマライチョウ) |
1897年 | トンガ | キサキインコ |
1898年 | ニュージーランド | ホオダレムクドリ(絶滅)、キーウィ、カカ、ミヤマオウム |
(3)切手に描かれた鳥の種類
鳥本に掲載されている鳥の種類数は2404種で、内26種が絶滅種です。世界鳥類和名辞典に掲載の鳥の種類は合計9021種、うち絶滅種64種ですので、おおざっぱに言って世界の鳥の内約1/4が切手になっていると言えましょう。2404種の鳥の内、日本で切手になっているのはあとで「日本の鳥切手」を見ていただければわかりますが1994年までの発行数で71種です。
それでは最も多くの国で発行されている鳥の種類は何でしょうか。
それはオオフラミンゴで、日本を含む60ヶ国・地域で計128種類の切手が発行されています。ヤツガシラも同様60ヶ国・地域で発行されていますが、計87種類とその枚数(=切手の種類数)ではオオフラミンゴにはかないません。その次に位置するのはハヤブサとツバメで両者とも50ヶ国・地域でそれぞれ84枚、77枚発行されています。これら4種類は世界の鳥切手で最も人気のある種類と言って良く、世界の鳥切手の四天王と言うべき存在でしょう。
鳥本で言うと、30ヶ国・地域以上で発行されている鳥の種類は19種類あり、20ヶ国以上で発行されている鳥の種類は45種類に上ります。
これらの鳥は、必ずしも自国で生息しているものに限られておりません。例えば、四天王の内オオフラミンゴは日本の自然界では生息しておりませんが、日本ではオオフラミンゴが画かれた切手は1枚発行されています。反対に、ヤツガシラは日本で記録されている鳥ですが、日本では一枚も発行されていません。
世界で最も人気のある鳥の種類上位21位(29ヶ国以上で発行された鳥の種類)は次の表の通りです。
この内13位にあるアメリカの国鳥ハクトウワシは34ヶ国・地域で発行されていますが、その枚数はトップのオオフラミンゴの128枚をはるかに超える193枚というのが注目されます。
順 | 種類 | 国・地域数 | 枚数(切手の種類数) |
---|---|---|---|
1 | オオフラミンゴ | 60 | 128 |
2 | ヤツガシラ | 60 | 87 |
3 | ハヤブサ | 50 | 84 |
4 | ツバメ | 50 | 77 |
5 | マガモ | 43 | 69 |
6 | メンフクロウ | 40 | 46 |
7 | イヌワシ | 39 | 89 |
8 | アマサギ | 38 | 62 |
9 | コウノトリ | 38 | 96 |
10 | カワセミ | 37 | 47 |
11 | ダイサギ | 36 | 54 |
12 | ミサゴ | 36 | 50 |
13 | ハクトウワシ | 34 | 193 |
14 | コブハクチョウ | 34 | 73 |
15 | ゴシキヒワ | 34 | 48 |
16 | ダチョウ | 32 | 71 |
17 | コンゴウインコ | 31 | 61 |
18 | コウライキジ | 30 | 46 |
19 | ヨーロッパハチクイ | 30 | 37 |
20 | ホオジロカンムリヅル | 29 | 61 |
21 | アオサギ | 29 | 49 |