慶応大学野鳥の会機関誌「エトピリカ」第二号
(1969年10月発行)掲載分

 
鳥だより−夏鳥・旅鳥・冬鳥の秋−


荒川洋一
 創刊号で多摩川の鳥のことを報告してからますます秋らしくなり、各地で冬鳥のニュースが聞かれるようになりました。

10月10日、秋晴れのもとを、目黒の国立自然教育園まで探鳥に出かけた、三間・三好・長沢さん北原君と僕の五人は、早くもマミチャジナイの到来を確認することが出来ました。ツグミの仲間では最も早く渡ってくるものだそうですが、期待してはいなかったのでかなりうれしく思いました。また、同園ではオシドリをはじめとするカモ類やカケスも来ていましたし、旅鳥のエゾビタキもかなりの数が休んでいました。木の数は多いですし、池もありますから、手近な冬鳥観察地として絶好だと思います。自然教育園をご存知の方はもちろん、ご存知でなかった方も身近な人にお聞きになって、近いうちに是非お出かけください。入園料は30円で、9月〜3月は午前9時から午後4時半まで開園しています。(売札は午後3時までです。)なお、月曜・祝日の翌日・年末年始約一週間は休園ですから念のため。

ところで、自然教育園でみたエゾビタキは旅鳥ですから、まだご覧になっていない方が多いのではないでしょうか。10日に僕は日吉の林でも見つけることが出来ましたので、今年見過ごしてしまった方は、来年でも9月の終わり頃から、是非、日吉の林を歩いてご覧なさい。確認したのは、競技場入り口付近の木で一羽、図書館前の木で一羽です。
でも、わざわざ日吉だとか目黒まで行かなくても、ひょっとしたらあなたの家のすぐそばにも渡りの途中の夏鳥や旅鳥が来ているかもしれませんね。現に、一部の方にはお知らせしましたが、僕の家のすぐ近くの林で7〜8羽ほどのエゾビタキを見つけ、キビタキのオス一羽とメス型(メス及びオスの幼鳥)数羽を確認し、アマツバメも飛んでいるのを見つけました。夏のうちは、これといった鳥も出ないでごく平凡な林だったのに秋になって旅のお客さんが、これほどたくさん来てくださるとは、思いもよりませんでした。そこで、ついうれしくなって空を仰いだとき、紺碧の中に白い糸の三筋か四筋流れているのが眼に飛び込んでくると、この世に生を受けた喜びに体中の血が清められるような気分になるのは、僕が単純だからでしょうか。
 
天高く、夏鳥・旅鳥・冬鳥の飛ぶ秋もすぐそのうちに厳しい冬になってしまうでしょう。彼らの旅の無事をみんなで祈ってやろうではありませんか。