春のドゥードゥルタウン =その2=
(2002年5月9日)


 ドゥードゥルタウンの山は、例年だとまだ新緑には少々早く鳥の数も少ない時期であるが、今年は春が早く来たせいかすでに山は緑一色で、鳥の囀りが充満していた。
毎年この山で営巣している常連種のアメリカムシクイ達は、ほとんど顔を揃えており大変に賑やかである。
早朝のまだ誰も居ない駐車場に車を置き空を見上げると、ヒメコンドル、クロコンドルの混群がソアーリングを始めていた。 ウタイモズモドキやキイロアメリカムシクイの響く囀りを背に受けて山を上り始めると、目の前の低木にシリシリ鳴きながら実を啄んでいる20羽以上のヒメレンジャクの群が現れ我々を出迎えてくれた。 トレールの両側では、一年ぶりに会うアオバネアメリカムシクイ、ノドグロミドリアメリカムシクイやアカフウキンチョウ等が盛んに囀っている。 やがて直ぐ目の前の近くの枝にクロズキンアメリカムシクイがやって来てクリアーで大きく楽器の音色のような声で囀ってくれる。 黒い頭巾と顔・胸・腹の黄色とのコントラストが実に奇麗なムシクイである。
空色と白で気品があるミズイロアメリカムシクイの囀りもあちらこちらから聞こえて来る。
枯枝にじっと止まっている小さなノドアカハチドリのシルエットを楽しみ、赤黒の尾を扇子のように広げて枝をピラピラしながら飛び歩くハゴロモムシクイの舞う姿に春を感じる。 二羽で追いかけ合い高い枝先で盛んに囀るルリノジコの日に当って輝く藍色が美しい。
森の奥からはキバシカッコウが2羽で呼び合っている声と、モリツグミのイ・ヨ・レ・・というフルートのような音色が響いてくる。
水辺に座っていると頭上からボルチモアムクドリモドキの口笛を吹くような声が聞え、アメリカヤマセミの発条を巻くようなトゥルルル・・という声、ミナミミズツグミのクリアーな囀り、エボシクマゲラのオス・メスで呼び合う鋭い声等全てが混じり合って耳に入ってくる。 コウウチョウもすでに数多く渡って来ており、たく卵先のアメリカムシクイの巣を探しているのだろう…見晴らしの良い枝先に止まって囀っている。

 今年の春もドゥードゥルタウンの山はいっぱい夏鳥達で溢れていた。
ここはニューヨーク近郊で一番多くのクロズキンアメリカムシクイ、ミズイロアメリカムシクイ、フタスジアメリカムシクイ、ハゴロモムシクイ、アカフウキンチョウ等が営巣する所である。 ニューヨークの大都会でもたった車で40分も走れば、こうした夏鳥達の春のコーラスが聞け営巣が見られる深い自然が保護された場所へ行けるので、ニューヨークの鳥見族は実に恵まれている。
今日一日での出現鳥種は66種類、内 アメリカムシクイ20種類であった。

(ニューヨーク在住 藤波 理一郎、2002年5月15日 )