春のセントラルパーク =その3=
(2002年5月上旬)


 5月に入るとセントラルパークも俄かに活気付いて来た。 我々がよく言う“ビッグデー”と称する「鳥溢れる日」が4日間もあった。 夜に雷を伴った激しい雨があって南西の強い風が吹くと、これに乗って渡り鳥達がやって来る。 そして翌日の朝、日の光が射しムーとする空気に包まれて蒸し暑くなり、羽根アリが大量発生して鳥達のエサトリが活発になる。
特にアメリカムシクイ、モズモドキ、アカフウキンチョウ達は、羽根アリが飛んでいる周りの低い枝に下りて来て羽根アリをフライングキャッチするので、その光景は正にソングバードの乱舞で見ごたえ有る。

 セントラルパークでのバーディングは通常西側の72丁目から入り、ジョンレノンの“イマジン・モザイク”で有名なストロベリーフィールドからスタートする。 朝の早い時間はここの高い木の枝でエサトリしながら木から木へ渡って行くキマユアメリカムシクイ(眉と喉がオレンジ色に輝く)やホオアカアメリカムシクイ等の人気種が見られ、足元では白黒のくっきりしたストライプの頭に小さいピンクの嘴がかわいいミヤマシトドが静かに歩いている。 大きな池の岸辺を歩きながらチェリーヒルという丘に上がると、頭、胸と脇が栗色のクリイロアメリカムシクイや黒いキャップを被ったズグロアメリカムシクイ等の声が混じった朝のコーラスが聞えて来る。
気温が上がる10時頃になると、鳥達も水場や日向を見つけながらランブルへ移って行く。
ボウブリッジの橋を渡ってランブルへ入ると、川が流れ鳥達の水浴場となる小さな池(アゼリアポンド)もあり、そこは大きな樹が密集しているちょとした森となる。
慣れない人は時々道に迷う事もある程深い森で、この時期は渡り途中のキバシ、ハシグロの両カッコウが潜んでいる。 日本のカッコウと違い、形はスリムで細長く木の天辺では鳴かず枝の真ん中で猫背のような姿勢で低くクークーと鳴いているので大変に見つけ難い。
ワーブラーウオークと呼ばれるトレールはムシクイの種類が豊富で、今年も人気ものメガネアメリカムシクイが出現、一日中大勢のバーダーに囲まれて囀っていた。
ワーブラーウオークを歩きつめると池に突き出したトレールのポイントに出る。ここはカオグロアメリカムシクイやササゴイ、イエミソサザイが営巣するところであり、例年上半身黄金色で眩しい程美しく人気のあるオウゴンアメリカムシクイが現れるところでもある。 今年も大勢のバーダーで賑わう土曜日についに現れ大騒ぎとなった。
森の中が温かくなる11時過ぎ頃、ベテランバーダー達はアゼリアポンドへ行く。
今回も毎日のようにアサギ、ノドグロルリ、キヅタ、フタスジ等のアメリカムシクイ達やボルチモアムクドリモドキ、ムネアカイカル、ミヤマシトド、ヒメウタスズメ、アカフウキンチョウ等が次から次ぎへと水浴びに下りて来て、沢山のバーダー達を感動させた。

 5月も10日を過ぎると、遅い渡りのズグロアメリカムシクイが増え、ソングバード達のメスの数が多くなってくると、そろそろ春の渡り鳥のシーズンも終わりに近づいてくる。
5月1日から5月11日まで確認出来た鳥は 111種類、内アメリカムシクイは29種類。

 すでに記した種類以外の主な出現種はノドアカハチドリ、チビメジロハエトリ、ナキヒタキモドキ、オオヒタキモドキ、ツキヒメハエトリ、アカメモズモドキ、メジロモズモドキ、キノドモズモドキ、アオバネ、ズアカ、シロオビ、ミズイロ、フタスジ、クロズキン、ワキチャ、シロクロ、ノドグロミドリ、キイロ、ヤシ、チャスジ、ウイルソン、クロボシアメリカムシクイ、オオアメリカムシクイ、カモドムシクイ、キタミズツグミ、アカクロムクドリモドキ、クロムクドリモドキ。

(ニューヨーク在住 藤波 理一郎、2002年5月15日 )