「2003年春のニューヨーク・ソングバード便り」第七報
(2003年5月11日(日) ― 19日(月))


バーダー達が待ちに待った今春一番のウエーブがやって来た。 ソングバードの種類や数も多くなり、毎日が楽しい鳥見日の週となった。
 
セントラルパーク ―― 年に2回か3回ぐらいしか見ることの出来ないホオアカアメリカムシクイ(Cape May Warbler)がついに現れた。このムシクイは年々その数が減ってきているので少々気がかりである。
毎年渡って来るのが遅いズグロアメリカムシクイ(Blackpoll Warbler)の数もかなり多くなった。鈴のようなチンチンチン…・という鳴き声が木の上から降って来る。 ムシクイの中でも渡りの飛距離が一番長く、冬は遠いアルゼンチンやブラジルで過し、春になると一挙に渡って来るらしい。
ネコマネドリ(Gray Catbird)の数が今年は多い。低い潅木の枝や街灯の上で色々な鳥の鳴き声を真似ながら、グジュグジュとエンドレスに鳴き続ける。
オオアメリカムシクイ(Yellow-breasted Chat)を見る。ムシクイとは思えない程大きな身体である。近年この鳥はアメリカムシクイに属さず、独立別種とするべきとする学説が出ている。
今週のセントラルパーク一番の話題はノドグロアメリカムシクイ(Mourning Warbler)の奇麗なオスが12日以降一週間も同じ場所に居り、ほとんどのバーダー達が楽しめたことだろう。 このムシクイは何時も潅木の中に入って囀りエサとりをするShyな鳥なのでなかなか初心者には見難い。 ところが、今回公園に現れたノドグロアメリカムシクイは、日の当る開けた明るい所で毎日、人目を憚るどころか40―50人程のバーダーが囲む前を左右に行ったり来たりホッピングしたりの大サービス。すっかり皆のアイドルになってしまった。これ程、頭から尾の先までクリアーにゆっくりとこのムシクイを見れるのは実に珍しい。
週半ばの15日午後から気温が急に上がって暖かくなり、数カ所で白蟻(Termite)が孵化し、これを食べようと鳥達が活発に飛び回った。 皆が見たがるクリイロアメリカムシクイ(bay-breasted Warbler)も低く下りてきて水浴びまでしてくれる。10メートル程目の前の倒木に群がる白蟻を夢中になって食べるハシグロカッコウ(Black-billed Cuckoo)。頭上の枝で鳴くキバシカッコウ(Yellow-billed Cuckoo)と共に30分程ゆっくりと見ることが出来た。
ムネアカイカル(Rose-breasted Grosbeak)やアカフウキンチョウ(Scarlet-Tanager)のオス・メスが大変に多い。
この日は高い枝で眠っているアメリカヨタカ(Common Nighthawk)も見られた。一部のバーダーは公園の北でメガネアメリカムシクイ(Kentucky Warbler)とオウゴンアメリカムシクイ(Prothonotary Warbler)を見たようである。
 
ベアーマウンテン州立公園 ―― 新緑の美しい山ではモリツグミ(Wood Thrush)とビリーチャツグミ(Veery)の掛け合いで鳴く声が森の中から響いてくる。
クロズキンアメリカムシクイ(Hooded Warbler),キイロアメリカムシクイ(Yellow Warbler),アオバネアメリカムシクイ(Blue-winged Warbler),ルリノジコ(Indigo Bunting),アカフウキンチョウ(Scarlet-Tanager)などの囀りの大合唱も絶好調である。 アオバネアメリカムシクイとキンバネアメリカムシクイ(Golden-winged Warbler)の掛け合わせ種ローレンスアメリカムシクイ(Lawrenceユs Warbler)を何年ぶりかで見た。 トレールを歩いているとシチメンチョウ(Wild Turkey)のメスが生まれたばかりの小さい20羽程の雛を連れて足元の潅木から飛び出してくるので驚かされる。 まだ完全には茂っていない木の葉の隙間からミズイロアメリカムシクイ(Cerulean Warbler),ハゴロモムシクイ(American Redstart)やノドアカハチドリ(Ruby-throated Hummingbird)などの巣が見られ、まさに山は夏鳥達の営巣の季節となった。 二つの公園で見られたアメリカムシクイは32種類、どうやら春の渡りもピークを迎えたようである。
 
ニューヨーク市オーデュボーン協会主催バードソン ―― 5月10日ニューヨークの中心 マンハッタン島のみと場所を限定したバードソンが行われた。 結果は昨年の記録より2種類多い111種類となった。アメリカムシクイは24種類で、ハクトウワシ(Bald-Eagle),オオキアシシギ(Greater Yellowlegs),アイスランドカモメ(Iceland Gull)等も記録された。

(5月20日ニューヨーク在住 藤波 理一郎記)