「8月の米国アリゾナ鳥見旅」
( 2001年8月)


 日中気温が40度近くにもなるアリゾナ砂漠の8月、子育てをしている夏鳥達やハチドリ等をを求めて、アリゾナ・ツーソン( Tucson)地域のTucson Mountain Park, Saguaro National Park, Sabino Canyon Recreation Area, Santa Rita Mountains等と南東部のニューメキシコとの州境Chiricahua Mountainsを1週間程歩き回った。
 
 8月15日、皮膚がチリチリする程乾燥していて暑いツーソン空港に到着、レンタカーを借りて郊外のモーテルに入る。 この時期は毎日のように午後遅くは雷雨があり、今日もまさに振り出しそうな黒い雲が空を覆って稲妻が光っている。
 
 翌日一日目は5時ホテルを出発、ツーソンの西Tucson Mountain Parkへ行き早朝バーディング、砂漠の鳥見は夜が明ける頃から8時ぐらいまでがプライムタイム。ハジロバト、ナゲキバト、サボテンミソサザイ等が一斉に鳴き始める。 ズアカカンムリウズラが子供を連れて一列になって道を渡って行く姿が実に微笑ましい。
Saguaro National ParkのBrown Mountain峠から見る砂漠の光景は迫力ある。 見慣れた森や林と異なり、 人が立っている形をした大きなサウアロサボテンが林立している、また大きなウチワサボテンやタマサボテンの黄色や深紅の花が一面に咲いていて独特の美しさである。
7時半開園と同時にArizona-Sonora Desert Museumに入る、ここは砂漠に生息する動物や植物が手軽に見られる所であり、しかも野鳥を見る重要なスポットの一つでもある。サボテンミソサザイ、サバクシマセゲラ、マルハシツグミモドキ、クロコウウチョウ、アカハシハチドリ、ノドグロハチドリ、フトオハチドリ、コスタハチドリ等を見る。
11時ぐらいまで園内で遊び、ホテルへ戻って昼食を取り午後は暑いのでシエスタ(昼寝)夕方、ツーソンの東郊外Santacatalina MountainsのSabino Canyon Recreation Areaへ出掛ける。 水量豊かなSabino Creek沿いのトレールは多種の樹木が茂っていて緑が眩しい。何時もはガラガラヘビやトカゲを主食にしているオオミチバシリが、ハンバーグの肉を強請りに目の前をうろうろ歩き回る。口笛を吹いて人を呼ぶようにホイホイ鳴くマルハシツグミモドキの声が静かな砂漠に響き渡る。非常に姿が似ているスナイロツグミモドキも居るので、注意深い識別が必要。 赤色がきれいなムネアカコウカンチョウ、枝から枝へ飛び移る真っ黒なレンジャクモドキ等を見ながら砂漠やサボテンを赤く染める夕日を楽しむ。
 
 二日目はRt. 19を南下してツーソンの南郊外Santa Rita MountainsのMadera Canyonで早朝探鳥。Florida Washの牧草地の草原でチャバネスズメモドキとサメスズメモドキの囀りを聞きながら識別。 この2種はメキシコ種で非常に似ており、しかもこの7月・8月のみこの地域に現れ囀ってくれる。 バーダー憧れのSparrowで、これのみ見に来るバーダー達もいるぐらいである。
その外やはり目玉鳥であるフタスジスズメモドキ、ズアカスズメモドキ、アカハラツグミモドキ等を見てMadera Canyon Roadをさらに上がる。 電柱に止まっている アレチノスリ、アカオノスリ、アメリカチョウゲンボウ等を車の中から見ながら走る。 途中Proctor Road Parking Areaに寄り、朝日に当たり美しく光っているルリイカル、ムネアカルリノジコ、ムラサキノジコ等を楽しむ。 最後はSanta Rita Lodgeへ行きフィーダーに集まるドングリキツツキ、メキシコカケス、シロガオエボシガラ、アオノドハチドリ、ノドグロハチドリ、アンナハチドリ、アカハシハチドリ等をベンチに座ってゆっくりと見る。 電柱や柳の木にたくさんの穴をあけてどんぐりを一つづつ入れていくドングリキツツキの動作がおもしろい。
朝の鳥見を終えて午後はいよいよアリゾナの東南端Chiricahua Mountainsへ向けて移動。
I-10をひたすら東へ走りニューメキシコ州に入る、そしてRt. 80を南下すると今夜からのベースとなる宿Portal Lodgeに着く。ツーソンから約4時間半のドライブ、360度の雄大な景観を楽しめる砂漠の中の何処までも真っ直ぐなハイウエイを突っ走る。途中アリゾナ名物“土嵐”にみまわれ霧がかかったように前が全然見えなくなったり、稲妻に包まれてバケツを引っくり返したような雷雨に遭遇したり、8月の砂漠の午後の天気はまさに男性的である。
 
 三日目の早朝はChiricahuas Mountainの東側Cave Creek Canyonを中心に探鳥。
朝焼けで美しいSilver Peakの山肌、20羽程のヒメコンドルにクロノスリが混じって頭上を滑空して行く、何百羽というスミレミドリツバメが飛び回っている。
South Fork Trailをゆっくりと歩く、松林になるとオナガに似た鳴き声を発しながら枝から枝へ飛び移るニシアメリカカケスが見られる。 扇のように尾を広げて枝を歩くカタジロアメリカムシクイ、と ムナジロゴジュウカラの混群も見られる。
アリゾナの目玉種ウツクシキヌバネドリの雄・雌が餌獲りに下りて来る、頭から背中が青銅色で胸から腹が赤い実に美しいメキシコ種である。
午後は山を下りてロッジに戻り、部屋の前のスズカケノキのルリノドシロメジリハチドリの巣にいる雛2羽を観察、巣立ち寸前のようで時々羽ばたきの練習をしている、親指と人差し指で丸を作った程度の大きさの巣に今にも零れ落ちそうな大きさの雛であった。 夕方、庭を開放してくれているSpoffordさんとCave-creek Ranchのフィーダーを訪れシマアカゲラ、ヒメキンヒワ、ドングリキツツキ、ムナジロミソサザイ、シロハラミソサザイ、イエミソサザイ、マツノキヒワ、セグロムクドリモドキ、ムナグロムクドリモドキ、ヒバリヒメドリ、ムジトウヒチョウ等砂漠種を楽しむ。
 
 四日目 今日の早朝探鳥はCoronado National Forestの険しい山道を鳥見をしながら2,600メートルまで上がる。
標高が上がるにつれて砂漠とは全然異なる鳥種が出て来るので面白い。 オリーブ・グレース・ノドグロハイ・サメズアカ等のアメリカムシクイとスナイロモズモドキ、メキシココガラ、ヒメゴジュウガラ等の大混群を見る。松の香りがプンプンする林道を歩くとグレースアメリカムシクイの群れに混じって待望のアカガオアメリカムシクイが現れる。
この時期アメリカムシクイ達は囀ってくれないので探しずらいが、こうした大混群に出会えると一度にまとめて何種類か見れるのでラッキーである。
トレール上に時々出てきては餌とりをするメキシコユキヒメドリを見たり、ムジエボシガラやヤブガラ等を見ながら山をゆっくりと下りる。 山は下の砂漠と違って実に涼しい快適な探鳥をさせてくれるのでありがたい。
午後はゆっくりと部屋の前のフィーダーにくるハチドリを楽しむ。 フトオハチドリ、ルリノドシロメジリハチドリに混じって珍しいスミレハチドリがいるので驚く。 頭がスミレ色、喉・胸・腹が真っ白でスマートな身体、ホバリングをしている姿は実に優雅で品がある。米国のバーダー達が一度は見たいと思う美しいハチドリである。
 
 五日目、六日目と同じPortalを中心に砂漠、牧草地、渓谷や山のトレールをハイキングをしながら鳥見を楽しんだ。
この時期は春の渡り種がいない為、見れた種類数は100数種と多くないが、この地域でしか見られない鳥達やメキシコ種そして営巣中や子育て中の鳥達をじっくりと見れたのと、数多いハチドリを身近に見れたので大変満足のいく旅となった。
 
 8月のアリゾナは5月末の晩春のアリゾナと同様に米国人に人気のある探鳥スポットの一つである。
 
(ニューヨーク在住 藤波 理一郎 )