自宅の巣箱でシジュウカラが巣作りをしました!
チューリッヒから南へ汽車で小一時間のところにあるルツェルンは、カペル橋やリギ山、ピラトゥス山、「4つの森の国の湖」等で有名でその美しい景色から「スイスの中のスイス」と言われているところです。日本人観光客にも有名でチューリッヒに泊まらなくてもルツェルンには泊まるという人達も少なくありません。
今年(2000年)になって、その美しいルツェルン州に住むキュンツリさんからお便りを頂きました。
自宅の外壁に掛けた巣箱にシジュウカラが巣を作ったと、雛を育て巣立つまでの様子をメールでお知らせいただいたものですが、とても生き生きとした報告で是非皆さんとも喜びを共有したいと思いますので、ご本人の了承を得て原文の味を失わないように出来るだけそのままの形でご紹介したいと思います。以下の段落で、最初に書いた日付はお便りの日付です。
また、写真はすべてキュンツリさんがお撮りになったものです。
- 4月15日
去年から我が家のテラスに巣箱をかけておいたのですが(家の外壁に固定してある)何と今年シジュウカラのつがいが中に巣を作りました!!
乾燥した葉っぱ、小枝、苔、など運び込まなくなったのでもう巣作りは終わった様です。でも作り終わったあとは嫌がらせなのかスズメやら、なんと中に入るには図体が大きすぎるクロウタドリがそばをうろうろ飛び跳ねたり、(ホシムクドリも来てました)巣箱の屋根にとまってたりシジュウカラ達2羽は小さいながらも威嚇したり、追い払おうとしたり観ていて思わずハラハラしてました。スズメなどは作った巣を乗っ取ろうという魂胆なのでしょうか?それともただの嫌がらせ?鳥の世界にも色々あるんですねえ。
まだ巣を作っている間、ある夜に戸を開けてみてみたらお椀の様な巣が出来てて、一番上は苔で覆われててよく出来てるんだなあととにかく感心しました。そして、3月25日の夜、友達が来てたので巣を見せたくて、まず中に鳥はいないだろうと思って開けてみたら(その上懐中電灯で照らしたりもしちゃって)中で1羽寝てたのでびっくりしました。 (その時私は良く見えなかったのですが、背の高い友達は鳥は頭を巣の中に突っ込んでじっとしてたと言ってましたから鳥にとってどんなに恐怖だったか思うと気の毒でなりません。心臓爆発寸前だったのでしょう)
危険を感じてもうこの巣には来ないだろうと思ったら、そこを我が家と決めてる様でその後も相変わらず来てるので安心しました。夜は毎晩どちらかが中で寝てるのでしょうか?2羽一緒に入る事はないのですか?巣を作ってる時は材料を運び込んでるのはメスのみだった様です。(胸の縦の黒い線が太いのはオスですよね)私達が見る限りオスはそばで警戒してる役目だった様です。
最近は、朝早くオスらしき方が小屋のそばでさえずってるので中で相方が寝てるのかどうかは解りません。でも昼間はつがいで一緒にいる所をみるのでまだ卵は産んでないと思われます。
卵を暖めて居る時は必ずどちらかが(メスのみですか?)小屋の中で座ってるわけですよね。という事は2羽揃って外に居る限りはまだ卵は産んでないと観ていいのでしょうか?
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- 4月16日
最近の彼らの動向にはやや不可解な所があります。 巣が使われてる事は確かなのですが。その理由としては、1. 4月15日土曜日オスがテラスのモミの木で幼虫のような虫を見つけて巣に運んだら中からもう1羽が顔を出した。でもその直後外で2羽共を見た。(2羽一緒にいたのではないのですが、1羽は巣のそばの柵にとまっててもう1羽はその前にそばを横切って飛んで行ったと思う)このモミの木には餌になる虫が良くいるようで彼らがここで餌を探してるのを見かける。
2. 4月16日1羽が巣から飛び出すのを見たのです。最近の彼らは動きが機敏ですばやく、以前はのんびり他の木にとまってさえずっていたのですが最近は現れたかと思うとすぐどこかへ行ってしまって、鳴き方も1声2声鳴くだけで以前とは全然違います。
モミの木にとまるシジュウカラの親鳥(右は拡大)
夜、戸を開けたら中で1羽寝てたのが3月25日ですのでもうそれから3週間経っている訳です。今巣の中で何が起こってるのか、もう卵を産んだのかまだなのか、まさかもう孵化しているのか全然見当がつきません。1週間前までは朝6時15分頃にきまって1羽がそばの手すりにとまって鳴いていたのですがここ4〜5日はそれもありません。
ああ、不可解な鳥達......
でも可笑しかったのは巣を作ってる最中の頃、主人がそばの植木に水をやろうと近くに行ったらどこからか飛んできて、そばの柵にとまって主人に対しても威嚇してました。喉の奥から出す様な独特な鳴き声で.....
“自分が主で鳥達は居候なのに....”と主人はブツブツ言ってました。もし無事に卵を産んで無事育ち、巣立つ時は会社を休んででも立ち会って見届けたいと今から子供を社会に出す親の様な心境です。
手すりにとまるシジュウカラの親鳥(右は拡大)
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- 4月24日
多分ここ数日の間で卵が孵ったかと思われます。22日などは気温が25度位にまで昇がり、巣箱が暑くなりすぎないか心配してしまった程です。今日はせっせと虫取りに励んでました。時々両方外に出ていた様です。 テラスのもみの木、もみじの木で虫を探している所を何度かみました。10分間位ずっと取っては運び、取っては運びを繰り返し(朝10時頃と夕方4時頃)それ以外もたまに他の所から運んでいるようです。巣箱に運ぶ前に1声、2声短くさえずる様です。(口にくわえているのにさえずれるんですね)でも見てると本当に微笑ましくて見てて全然飽きませんね。
モミジの木で餌をとるシジュウカラの親鳥(右は拡大)
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- 5月8日
やっと夜もふけて親鳥たちも眠りについたと思います。
朝、日の出から1日中ひっきり無しにホントに気の毒になるくらいせっせと餌を運んでます。最初は殆ど聞き取れない位だった小鳥達の囀りも最近ではしっかりとした鳥の鳴き声になってます。5月7日〜8日位からオスかメスどっちか解らないけど1羽の方は外に体全体を出したまま餌をあげているので小鳥達もそこまでジャンプ出来る位に育ったという事ですよね。
多分あと数日で飛び立って行くと思われます。無事育って嬉しいけど巣立って行ってしまうのは寂しいですね。ところで先週、1度ちょっとしたハプニングがあったのです。いつも朝から餌を運んでる親達が全然姿を見せず、心配していたのですが、9時頃になっても現れず、小屋の中からはお腹を空かせた小鳥に声がぴーぴーひっきりなしに聞こえるし、どうしようかと思って野鳥の専門家に電話で問い合わせたところ、(Schweizer Vogelschuts=SVS です)多分何か親鳥に起こった可能性がある、もしこのまま1時間位近く現れなかったら小鳥は餓死してしまうからもし現れなかったら挽肉を1つぶずつ楊枝に突き刺して食べされば育つよと言われたのです。このまま餓死させる訳にも行かず取り敢えず挽肉を買いに行って準備し、ひたすら親鳥が来るのを待ってたらなんと30分後位に現れたのです。あー、その時の嬉しかった事!その後はもうひっきりなしに餌を運んでました。何が起こったのでしょう?小鳥達の事うっかり忘れちゃってたのかしら...
危うく小鳥達の親替わりになるところでした。きっと可愛いかっただろうけど...餌はあげられても飛び方等は教えられないと主人と笑ってました。
ここ2週間程スイスは初夏の気候でここ数日は25度近くまで気温があがっています。休みなしに飛んでるので小屋の近くにプランターの水受けを置いて水を入れておくとたまに水を飲んでます。すごく可愛いですねー。
ベランダの植木鉢で餌を探す親鳥(右は拡大)
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- 8月27日
ところで我が家のシジュウカラですが無事(...でもないのですが...)に5月14日に5羽巣立って行きました。 扉を開けてしまって中に親鳥がいたのを見たのが3月25日ですから巣が出来あがった後、卵を産む準備から飛び立つまで大体2ヶ月弱かかっていた事になります。
飛び立ったのは幸い日曜だったので1日中観察する事が出来ました。その前の5月10日(水)に始めて小鳥がちょこっと顔を穴から出すのが見られ、(その可愛らしさ、もうすごく感激でした)その後日増しにちょくちょく覗き出す様になり、12日(金)には首位まで出していたのでもうすぐと次の13日(土)は待機してたのですが何も起こらず。
14日(日)は朝6時頃から見ていると親鳥が餌をやって飛び立ったあともう胸位までそり出しジジジ...と鳴きだす位になりました。それを何回か繰り返したかと思うと突然1羽するっと飛び出てテラスに着地しました。その後次々30秒から1分置きになんと5羽出て来ました。あんな小さい小屋の中に5羽いたなんてどんなに窮屈だった事でしょうね。最初の1羽は出て直接テラスに着地したのですが、他のは数秒少し飛び回りそれぞれ又テラスの手すりや植木に止まって休憩したり飛んだりしながら結局いなくなってしまいました。でも最初に飛び出した1羽は上手く飛ぶ事が出来ず、そのままテラスにじーっとうずくまっていたり、とぼとぼ歩いて植木の陰に隠れたり、その内、日が照ってきて暑くなってきて窓のブラインドの下の隅っこにうずくんだりととてもカワイソウでした。主人と2人で飲み水を近くに置いたり、幼虫を見つけて近くに置いたり、お箸で口元に持っていっても食べようとせず、目をつぶってじっーとしてる状態で、もうすごく哀れでかわいそうでした。でもその内親鳥が来て餌をあげる様になり、私達も安心しました。多分親達も最初は飛べる雛達の面倒を見てその後戻ってきたのでしょうね。ちょっと飛び、又着地。ちょっと飛びまた別の所に着地。あきらめてとぼとぼ歩く後ろ姿はホントに哀れでした。
その内少し高く飛べるようになったのですがブラインドの間に突入しちゃったりしてそこで親鳥から餌をもらったり、見てる方はハラハラの連続でした。そんな事をずっと繰り返し、だんだん少しずつ距離も高さも飛べる様になって来て午後4時頃、親鳥がそばで一緒に飛んだり、飛ぶのを見てたりしてると思ったら急に親と一緒にすーっと飛び立ち屋根の上に消えていなくなりました。私達としては飛べて嬉しかったけど全て終わってしまってなんかがっくりでした。結局1日中小鳥を観察していた日曜でした。
ベランダのベンチで休む幼鳥
その後3〜4日シジュウカラの雛特有のジジジ...という鳴き声がそばの木々で聞こえていて1度雛達が飛び回っているのを見ました。(数えると5羽いたけれど、うちで育ったシジュウカラかどうか...?)
ブラインドの下の幼鳥
その後は夏中、暑いせいか鳥を見る事は滅多にありませんでした。たまにスズメが来るくらいでほとんどは森とか山で夏を過ごすのでしょうか?でもここ2〜3日またシジュウカラの声を聴く様になりました。主人が目撃したのですが先週1度シジュウカラが来て巣箱の中を覗いていたそうです。(巣箱の中の前回つくった巣は、もう取り出してあります)又今日の朝、激しい雨と風が吹いていたのですが、小屋のそばのブラインドの間でな、なんとシジュウカラが1羽雨宿りをしていました。もしかしてあの飛べなくてブラインドの間に突っ込んでいった小鳥がその時のブラインドの事を思い出し雨宿りしてしてたのかもなんて事あるでしょうかねえ。
そのあと巣箱の上に止まってるのを見たら大きさからして完全な成鳥ではなかった様です。そのあと巣箱の屋根の下に逆さにつかまったりして巣箱のそばでうろうろしてました。
なんかここから巣立っていった鳥の様な気がしてなりません。
今年産まれた鳥はもう来年卵を産めるのですか?来年もくればいいなと思っています。
最後に飛べずにテラスでうろうろしてた子の写真は近くで撮れました。 もし来年も来たらもう少し良い写真を撮る様にしてみます。
テラスでうろうろする幼鳥
(注)家の近くに巣箱をかけて、野鳥がこのように実際にそれを利用してくれるのは大変嬉しいものですし、キュンツリさんのように観察できると最高ですね。
キュンツリさんの家の巣箱の配置と大きさをお聞きして図で示して頂きました、是非こちらもクリックしてみてください。