スイスの鳥を見分けてみましょう。

鳥名の後のカッコ内はドイツ語名、その後の頁数はSchweizer Vogelschutz (SVS)発行の図鑑「Vögel der Schweiz」(スイスで普通に見られる鳥だけを紹介しているコンパクトな図鑑でSVSに請求すれば5フラン程度で入手できます。)で、数字はその鳥の説明文のある頁です。図鑑の絵を見ながら読んで下さい。勿論その他の図鑑でもかまいません。♂:はオス、♀:はメスのことです。
なお、鳥の名前をクリックすると「近所の鳥調査」での個別の鳥の出現率の資料へ移動します。その資料には写真がある場合もありますので、参考にして下さい。
 

1.  イエスズメ(Haussperling:P16)と スズメ(Feldsperling:P16)

チューリッヒの市街地で普通に見られるのはイエスズメです。♂はグレーの頭喉から胸の黒い“よだれかけ”があり、頬は白です。♀は全体に薄茶色で、目の上にクリーム色の線があります。 日本の市街地で普通に見られるのはスズメです。チューリッヒにもスズメはいますが、人家から離れたところで見られ、日本のように人家の近くで見られることはありません。♂♀とも同じ外観で頬に“ほくろ”があるのが特徴です。

 

2. ズアオアトリ(Buchfink:P17)とイエスズメ(上述)

ズアオアトリはチューリッヒの市街地で普通に見られます。(日本にはいません。) イエスズメのするように、よく地面におりて人のいる近くで餌をとったりするので、イエスズメと混同している人もいますが、よく色や姿を見れば、間違えることはありません。強いて言えば♀の色が比較的地味なので注意を要しますが、ズアオアトリの♀は羽に白い線がはっきりと出るのに対し、イエスズメの♀には白線がないこと(よく見ると淡色の細い線はありますが。)、ズアオアトリの♀は全体にグレーがかっているのに対し、イエスズメは薄茶色で背中に黒っぽい点があることなどで区別できます。ズアオアトリはよく響く大きな声で盛んにさえずります。

 

3. クロウタドリ(Amsel:P18)とホシムクドリ(Star:P16)

チューリッヒでは両者とも普通に見られます。日本では迷鳥として数件の記録がある(クロウタドリ)か稀な冬鳥として少数が限られた地方に渡来する(ホシムクドリ)程度の珍しい存在です。 両者とも同じような大きさで、全体が黒っぽく、黄色っぽいくちばしなので遠く離れたところから肉眼で識別するのは大変難しいです。しかし近距離で観察ができるか、双眼鏡を使って順光であれば間違えることはありません。 クロウタドリの♂は真っ黒の体にオレンジ色または非常に明るい黄色の嘴です。♀は焦げ茶色の体に黄色み又はオレンジ色がかった嘴で、体の下面は焦げ茶色の斑点があります。 ホシムクドリは♂♀とも同じ色で、緑や紫色に光って見える黒いからだに白っぽい斑点が体全体に見られます。

声はクロウタドリがケケッ、チーッなどと比較的けたたましく鋭い声であるのに対し、ホシムクドリはジュー、ジュリジュリなどと聞こえる濁った幾分柔らかい声です。 クロウタドリは林など木の近くで単独でいることが多いですが、ホシムクドリは比較的開けたところで数羽の群でいることが多いようです。 クロウタドリは止まるとき前につんのめるようにして尾をたてる動作をします。また、ホシムクドリは止まる前に羽を台形のような形に開き羽ばたかずに滑空することが多いので、これらの特徴がみられれば、シルエットでも見分けることができます。


 

4. カラの仲間

シジュウカラ(Kohlmeise:P25)、アオガラ(Blaumeise:P25)、ヒガラ(Tannennmeise:P25)、エナガ(Schwanzmeise:P23)、コガラ( Mönchsmeise :P25)、ハシブトガラ(Sumpfmeise:P25)、カンムリガラ(Haubenmeise:P25)というカラの仲間はすべて普通にチューリッヒで見られます。 (ハシブトガラは比較的に少なく、カンムリガラは針葉樹のあるところに多くみられます。) 日本でもアオガラとカンムリガラを除いてすべて見られます。(ハシブトガラは日本では北海道だけにいる種類です。)カラの仲間は冬に日本では混群を作ることが多いですが、チューリッヒでは何種類ものカラが混ざり合うことはそれほど多くはありません。しかし生活環境がほぼ同じなので、カラの仲間にあったときには、注意深く観察するとよいでしょう。コガラとハシブトガラは声が違うので区別がつきますが、姿だけでは識別は非常に困難です。それ以外のカラ類は、姿(特に頭部の色と形)が見られれば、ほとんど間違えることはないですが、シジュウカラの幼鳥がいる時期にはそれとコガラ、ハシブトガラ、ズグロムシクイの♂とは頭の色と形だけでは混同する恐れがあります。しかし幼鳥は一般にしきりに鳴いているので、声と併せて判断できれば間違えることはないでしょう。 鳴き声ではさえずりが聞かれれば、まず容易に識別できますが、地鳴きだけでの識別はとても難しいです。(ヨーロッパのシジュウカラは日本のシジュウカラに比べるとさえずりのパターンが多く複雑で、日本のシジュウカラのさえずりを知っている人は全く違う鳥に聞こえることもあるので要注意です。)

 

5. アオカワラヒワ(Grünfink:P17)とゴシキヒワ(Distelfink:P14)

チューリッヒでは両者ともごく普通に見られます。(日本にはいません。) アオカワラヒワは♂♀とも同色で、全身緑色がかった褐色で羽には黄色の細長い班があります。ゴシキヒワも♂♀同色ですが、顔面が赤、白、黒と派手な色をしているので姿が見られれば間違えることはありません。両者とも飛んだとき羽に黄色の線が出ますが、ゴシキヒワの方がはっきりした黄色で、アオカワラヒワは双眼鏡などで注意深く見ないとわからないことが多いようです。即ち、遠くで飛んでいる時に肉眼で鮮やかな黄色の線が見られればほぼ間違いなくゴシキヒワと考えられます。 声は、両者ともキリキリコロコロと鈴を転がすような声を出すことがありますが、ゴシキヒワの方が鋭くアオカワラヒワの方が丸みのある声に聞こえます。

 

6. ツバメの仲間とアマツバメの仲間

ツバメはなじみがありますが、アマツバメは“ツバメ”という言葉がついていてもいわゆる「ツバメ」とは違う種類で、どちらかというと分類上ではツバメはスズメに近くアマツバメはカワセミやブッポウソウに近い種類です。チューリッヒ市で空に群れているツバメのような鳥は、ほとんどの場合アマツバメの仲間といっても良いくらいアマツバメの仲間は普通に見られます。特にヨーロッパアマツバメ(Mauersegler:P18)とシロハラアマツバメ(Alpensegler:P18)が普通です。ツバメの仲間にもいろいろありますが、よく見られるのはツバメ(Rauchschwalbe:P19)やニシイワツバメ(Mehlschwalbe:P19)でしょう。ツバメ、コシアカツバメは日本にもいますが、ヨーロッパアマツバメ、シロハラアマツバメ、ニシイワツバメは日本にはいません。
まずツバメの仲間とアマツバメの仲間の見分け方ですが、アマツバメの仲間はツバメに比べて大きく、羽を広げて飛んでいる様は三日月か鎌のような半円形をした細い羽で、羽ばたきは、羽を伸ばしたまま小刻みにおこない、ツバメの仲間のように深く折り込むようなひらひらした羽ばたきと区別されます。 飛んでいるところでは、ヨーロッパアマツバメは胴体の上も下も黒く、羽の下側が薄く見え、光線が良ければ喉のところが白く見えます。シロハラアマツバメは、胴体の下側がはっきりと白いことで区別できます。ツバメは胴体の下側は白っぽく見えますが、上側に白いところはなく、尾ははっきりとくい込むようないわゆる燕尾で、くい込みが浅いニシイワツバメと区別されます。ニシイワツバメは腰が白く、そこが見えれば決定的に識別できます。
鳴き声はそれぞれ異なります。ヨーロッパアマツバメは甲高いリューイ、ジュリリリーというように聞こえ、シロハラアマツバメは、キリリリリーとけたたましく鋭く鳴きます。ツバメはチュビチュビチュリリリーと聞こえ、ニシイワツバメはもっと低く濁ったジュリリリという声です。

 

7. タカやハヤブサの仲間

チューリッヒの近郊にもタカやハヤブサの仲間は多く見られます。トビ(Schwarzmilan:P10)、アカトビ(Rotmilan:P10)、ノスリ(Mäusebussard:P10)やハヤブサの仲間のチゴハヤブサ(Baumfalke:P11)、チョウゲンボウ(Turmfalke:P11)などが普通に見られる猛禽類の仲間です。 アカトビ゙の大きさや、アマツバメをねらうチゴハヤブサのすばやさは、もし目にできたら忘れられないくらいの印象を残すでしょう。 タカ類とハヤブサ類の見分け方は、飛んでいるときの翼の先がとがっているか人の手の指のように開いているかというところで、とがっていればハヤブサの仲間、開いていればタカの仲間というのが、一般的なポイントです。しかし、向かい風の中を飛んでいたり、急いで羽ばたいて進んでいるときなどは、タカ類でも羽の先がとがって見えますので注意が必要です。止まっているときの顔が見られたら、目の下に喉にのびるような黒い色があるものは、一般にハヤブサの仲間でタカの仲間はその様な黒い色はありません。 タカやハヤブサの仲間は遠方で飛翔中に見分けることが多いので、初心者が簡単に断定することはできませんが、次のようなポイントがわかれば、ある程度は確定できます。
トビは上下面とも黒っぽく、尾は三味線のバチ形か、少しへこんだ楔形で、翼は水平に保つことが多いです。 アカトビは上下面とも赤茶色の部分が見られ、尾が長く、大きくV字形にくいこんだ形で、翼はV字形に保つことが多いです。
ノスリは尾がトビ類よりも短く、トビと異なり角がとがっておらず、丸く開いて見えることが多くあります。 チゴハヤブサは頭から上面が黒っぽく、下面は特に尾に近い部分が赤っぽく見えます。大きさは鳩くらいで大きくは見えませんが、非常に精悍な飛び方なので鳩と見間違えることは少ないでしょう。
チョウゲンボウは非常に長くみえる尾をもち、尾の先に黒い帯があり、全体にスマートな感じを与えます。飛び方はひらひらした感じで力強さはあまり感じられず、よく停空飛翔をします。