「ヒナを拾わないで!!」キャンペーン
2004年度

 
日本野鳥の会のキャンペーンポスターには以下のように書かれています。

Q:なぜ、ヒナを拾っちゃいけないの?


<まずは、鳥と自然界についての正しい知識を得る必要があります>
野生とは、厳しい世界です。生き延びて当たり前という人間の世界とはまったく違い、明日生きている保証は何もないのです。野生の小鳥の平均寿命についてはデータが少ないのですが、およそ1年半前後と考えられています。一冬を生き延びたものは経験を積み学習をし、数年あるいは10年以上も生存する可能性もありますが、その割合はおそらくヒナの段階からすると1割あるかないかという程度でしょう。
<自然界の厳しさについて>
自然界での命の原則は、他の生物の食物となることであり、生き延びるものはほんのわずかです。食べられる側は食べる側よりも数が多く、同時に子沢山という原則があり、さまざまな生物種が共存しています。虫や魚の卵の数を想像してみて下さい。小鳥も猛禽類や獣に食べられたり、ヒナや弱ったものがカラスのような雑食性の鳥に食べられたりする一方で、卵をたくさんうんだり、春から夏の短期間に子育てを繰り返したりして対応しています。もし卵すべてが親になったとしたら、増えすぎによって食物やすみかが不足する事態となるでしょう。その種の食物となる生物を食べ尽くしてしまえば、その種もまた存続できなくなってしまうかもしれません。そうならないのは、厳しい野生の世界では生き延びた一部が子孫を残していくという、生態系のバランスが保たれているからと考えられます。そうは言っても、目の前のヒナや傷ついた野生生物を助けたいという優しい気持ちに対してほうっておけと言っているわけではありません。助けたいとすれば、助けるべき対象かどうかという判断と、どのようにしたら助けられるかという知識が必要になります。
<法律や行政の対応>
善意による保護も含め、野鳥の捕獲・飼育は「鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律」いわゆる「鳥獣保護法」によって禁じられています。したがって、保護飼育する場合にも許可が必要になります。まずは、各都道府県の鳥獣行政担当部署(自然保護課などにあることが多い)に相談し、指示を仰いでください。
ただし、野鳥の保護・飼育に詳しい技術者、獣医師もまだあまり多くありませんし、この時期の救護施設は保護または誘拐されてしまったヒナたちであふれんばかりであることも少なくありません。行政としては、相談を受けた場合に「巣に戻す」 「そのままにする」ことを基本としているところが多いでしょう。不親切だ、という声を耳にすることもありますが、きちんと育て、厳しい野外での生き抜き方を教えた上で放鳥することが出来る種は少ないこと、放鳥してもその後どうなるのかよく分かっていないこと、最優先で保護が必要ないわゆる希少種や生態系に対して労力がかけられなくなってしまうなどの危惧があること、税金で運営されている施設では、住民から様々な考え方に基づいた様々な意見が寄せられていること、などの事情があるということも考慮に入れておかなければなりません。
<ヒナを育てるのが難しいワケ>
身近で繁殖する鳥の代表格であるツバメでさえ、野生に戻れるように育て上げるには大変な苦労があるそうです。ヒナを育てるのがどうして大変か、というと多量の動物質の食物が必要であったり、栄養が偏ってしまうと障害が現れたり、ヒナがうまく野生の生活に適応できるような学習をさせられなかったり、といったことがあります。たとえば、スズメでは一回の繁殖で4200回もヒナに餌を運んだという例が報告されていますし、人がいつまでも餌を与えていればヒナは独立しようとしないことも知られています。また、人になれてしまったがために、周囲を警戒しなくなって捕食者に食べられてしまったり、放しても帰ってきてしまうというように野外生活に戻れなくなってしまった鳥の例もあります。
 

日本野鳥の会とは・・・
 
日本野鳥の会は、自然と人間が共存する豊かな社会の実現をめざし、野鳥や自然とのふれあいを楽しみながら、自然保護を進めている民間団体です。1934年に設立されて以来、全国約49,000人の会員に支えられて、国内・海外において様々な活動を展開しています。おもな活動は、“野鳥とその生息地を守るための土地の取得・管理・運営”、“大規模公共事業への政策提言”、“野鳥や自然に親しむイベントの実施”、“アジアの自然を守る国際協力”などです。これらの活動を進める重要な資金源は、会員の方からの会費やご寄付などです。今、残された自然を守っていくために、私たちがやらなければいけないことは、たくさんあります。自然を守る力をより大きくするために、あなたの力を、私たちにかしてください。
 

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