毎日新聞1964年5月14日付け記事「人と小鳥」
愛鳥週間で人と鳥の関係をテーマにした話題ですが、学校の先生の話に合わせて私のことがとりあげられました。些細な事柄ではありますが、この記事に関して各方面から色々なお手紙を頂きました。
私が鳥の世界、自然保護活動に入っていくきっかけをつくった記事。バーダーの原点がここにあります。
(記事の内容紹介)
少年の祈りとどかず 子スズメは死んだ
子スズメの死を悲しんでいる少年は板橋区大谷口二の三四、セントラルハウス内、会社員、荒川一郎さんの長男、洋一君(14)=早稲田中三年=。十二日午後四時ごろ、ベランダの近くを苦しそうに飛び回っている子スズメを見つけた。屋根にぶつかったり、ベランダの手すりにとまろうとしたり・・・・・・。そっと捕らえてみると左足が不自由だった。
洋一君はもともと動物が大好き。小学校三年生のときには文鳥を飼っていたし、弟が子スズメを拾ってきたときにも介抱した経験がある。
こんどもさっそく「大事に面倒をみて親スズメのところに返してあげたい」と看病をはじめた。前に飼った文鳥の名をそのまま使って“ルリ”と名付けた。あき箱にワタを敷いてベッドを作った。不自由な左足に赤チンをぬってやった。しかし子スズメは水と牛乳をちょっぴり飲んだだけで、ワタのふとんにくるまり元気なく洋一君の机の上で眼ってしまった。
十三日からの中間試験に備えて遅くまで机に向かっていた洋一君は、ときどきのぞきこんで看病した。それを見て両親も「なんとかよくしてやりたい」といっしょに心配した。
十三日朝、洋一君は“ルリ”の鳴き声で目をさました。気持が通じたのか、とても元気そうに“チュンチュン”と鳴く。「よくなるかもしれない」・・・洋一君はリンゴ箱にアミ戸をかぶせた広い“家”に移してやり、水や米、牛乳などをやつてみたが、あまり食ぺたがらない。気になったものの登校した。だが、午後一時ごろ帰宅してのぞきこんだときには“ルリ”はもう冷たくなっていた。
洋一君は「こんどもダメだった」とがっかり。さびしくシャベルを握ってベランダの下の土を掘った。ここは洋一君の動物のお墓 - - 同ハウスに移ってから二年間に死んだカブト虫や金魚、メダカなどを埋めてあるところ。ワタにくるまった“ルリ”のなきがらは丁寧に埋葬され他の動物と眠っている。