(昭和47年12月執筆) アメリカの自然保護、
第三章 アメリカの自然保護の独自性
第一節 アメリカの自然保護の独自性を形成する諸要因
六、人権問題と人口問題


 

 
六、人権問題と人口問題

  自然保護の問題を広く人間環境の問題としてとらえるとしたら、どうしても避けることができないのは、人口問題と都市問題である。アメリカは特に人口問題、都市問題において人種、中でも黒人問題と深い関係がある。人口がうなぎ登りに増加し、このままでいったら人類を養うだけの食糧を供給できなくなる日も遠くはなく、鉱物資源もあと何年かで底をつくだろうということが言われ、多くの論文が出ている。食糧の供給システムが完全に全人類に供給し得なくなるであろうということを前提とすると、どうしても人口を制限していかなくてはならなくなる。
 アメリカで特に黒人に反感を持つ白人達は、黒人の生殖ストップを主張し、極端なものの中には人口コントロールによって黒人を絶滅させようというものもあるといわれる。こういった人口コントロール=黒人という考え方がアメリカにおいておこりがちなのは、黒人が多くの子を産んでしまうという現実から来ることは間違いない。しかし、それは正に黒人問題として叫ばれている黒人の生活程度の低さ、都市における黒人のゲットー化などのアメリカの社会的問題が背景となっているのである。
 北部都市における黒人出産の半分は未婚の母親によるということもいわれているように、黒人ゲットーの中の悪循環によってゲットーから逃げ出すことができず、また、生活程度、教育も改善されにくいために黒人の出産率が相対的に白人より高くなっていくのである。国家における、貧困、福祉の問題で解決がつかず、このように人権問題が絡み、より情勢を複雑にしているのもアメリカの特性の一つである。
 
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