(昭和47年12月執筆) アメリカの自然保護、第二章 アメリカの自然保護の歴史的概観

 
第二章 アメリカの自然保護の
歴史的概観

  前章で見たようにヨーロッパと日本、ヨーロッパとアメリカはそれぞれ自然観や自然保護の理念実践が異なっている。それではアメリカ人がこれまで歴史に刻みつけてきた、彼らの自然保護とは具体的にどういうものであったのかという点に注目し、初期の植民地時代から今日までのアメリカの自然保護(自然破壊)の歴史を見ていこうと思う。歴史的概観をするにあたって、アメリカの歴史を便宜上次の4つの時期に分けることにする。
 
 一、17世紀初頭から19世紀の末、正確には1890年に出された国勢調査報告書によりフロンティアの消滅が明らかにされた時までなのだが、保護の歴史において明確に年代をいうことは不可能である。
 
 二、19世紀末から第二次世界大戦前、ニューディール政策前後まで。はじめの時代が破壊の歴史だとすると、この時代は保護に注意が向きはじめた時代ということができる。アメリカ的自然保護の根源が形成される時期であるので、他のどの時代よりも詳しく見ることにする。
 
 三、20世紀中頃から1960年代中頃。戦後の冷戦と経済発展により自然がほとんど顧みられなかった時代と言って良いだろう。工業の進展めざましく、日本でいう公害があたりまえのようにでてくる時代である。60年代中頃というのは、明確なエポックとは言えないかもしれないが、生態学が注目をあびはじめ、住民が事の重大さに気付きはじめる時代である。
 
 四、1960年代後半以降。なんといっても1970年を境にして、世界の環境問題が真剣にとり上げられるようになった端緒となったのは、ニクソン大統領の年頭教書であろう。いわゆる「宇宙船地球号」の時代である。
 
目次に戻る
続けて読む場合は、右矢印をクリックしてください。