この文章は、日本野鳥の会東京支部が発行する支部報「ユリカモメ」2000年3月号に藤波さんが寄稿されたものですが、藤波さんの許可を得て転載させていただくものです。

 
一世界の野鳥 一
 
「ニューヨーク鳥便り」D
"鳥見雑感"

藤波理一郎(ニューヨーク在住)

 
その1「クリスマスツリーと一緒にフクロウが」
 この原稿を書いている12月末は紐育もまさにホリデーシーズン。この頃ともなると、街のあちらこちらにクリスマスツリーやミッスルトーを売る露天商が店を並べる。丁度日本の歳末に正月用松飾を売る店が町中に並ぶのと同じ光景である。このツリーはほとんど紐育の北で育ったモミの木で、家庭用とはいえ等身大から2倍ぐらいの大きなものまであり、そのほとんどは持ち運びがし易いようにと、網がすっぽりと被せられて太い棍棒のような姿で立て掛けられ売られている。
 昨年、私の友人夫妻が2m以上もあるツリーを買い、家に持って帰って網を切ると、窮屈そうに縮こまっていた枝が活きよいよく広がると同時に何と一羽の小さなフクロウ(アメリカキンメフクロウ)が身を縮めた仮死状態でボロッと落ちて来たので大慌てをした話しをしていた。
 すぐにリハビリステーションヘ持ち込んだので、フクロウ君無事にもとの自然に返されたようであるが、めったにない珍しい話しと思っていたら、先日地元紙に同じような話しが載っていたのでびっくりさせられた。
 
その2「渡り鳥達にやさしいコーヒーを飲もう」
 米国はコーヒーをほとんど南米や中南米から輸入している。もともとコーヒーの豆は成長した熱帯林の天蓋で太陽の光が遮られたその陰で育つ潅木に生る。伝統的に、こうした環境の大規模な熱帯林の農園でコーヒーは栽培され育成されて来たので、渡り鳥達も冬の間この大木の天蓋で暮らし、自然と共存が成り立っていた。
 ところが、1970年代に入って、大手のコーヒー園が熱帯林の木々を切り倒して天蓋をなくし、さんさんと太陽を当てればコーヒーがもっと早く育ちち収穫高も上がる事に目をつけ、Sun Coffeeと呼ばれる育成方法に切り替え始めた。そしてここ2年程、このSun Coffeeはマーケットで主流となってしまった為、熱帯雨林が減り渡り鳥達の数が減少し始めた。
 そこで昨年ABA(American Birding Association)とカリフォルニアのコーヒー卸問屋が共同で、従来の大木の陰で育てるShadegrown Coffee栽培を行っている農園をサポートする事業をスタートさせた。このコーヒーはSongbird Coffeeと呼ばれ、初めは限られた店にしか置かれていなかったが、最近は全国的にバードストアーや園芸店等に置かれ始め、その売り上げも伸びてきている。"ECO-OK"のシールが貼ってあり値段が多少高いものの、グルメコーヒー、オーガニックコーヒー、鳥に優しいコーヒー等という宣伝文句で徐々に浸透して来ている。
 
その3「世界一の鳥見おばさん亡くなる」
 鳥の種類を世界一多く見ているアメリカのおばさんが先月68才で亡くなり、地元紙にも大きく採り上げられていた。死因はマダガスカルで鳥見の移動中に乗っていた車の事故死によるもので、しかも大変な珍鳥とされているヘルモットモズ(Helmet Vanga)を見れた直後であった。
 米国では"Life Bird Lister"といって、生涯何種類の鳥を見れるか競争をしたり、他人に自慢したりする人が大変多くいる。登録をしておけばABA(American Birding AssMiation)で公式に認定をしてくれ、毎年ABA誌にその順位が掲載される。彼女の記録は約8400種、世界の鳥の種類が亜種も入て約9900種といわれているので、何とその85%を見た事になる。しかも2位との差が2000種であるからすごい記録であろう。もっと驚異的なのは、彼女が50才の時"癌"に侵され、医者にあと1年しか生きられないと宣告された後、病院の治療を拒否、趣味である鳥見に没頭する生活に入った。夫の相続遺産を使って、旅行会社が企画するツアーに出来るだけ多く参加し、世界中の山、海、島、ジャングル等を歩き回った。彼女が生前「Listerではなく、ただ単に鳥をじっくりと楽しみながら見るBirderになりたい」とよく言っていたのが印象深い。
 
Oldsquaw
海辺で聞く“コオリガモ”の声は
正に春を告げるファンファーレである。

 
(注)撮影:藤波理一郎©
 
この写真は、藤波さんが撮影したコオリガモですが、
「ユリカモメ」掲載の写真と同一ではありません。