「冬のノルウエー・ラップランド鳥見旅」
2002年3月


 3月、まだ真冬の北ノルウエー・バランゲル半島へ行き、冬鳥とオーロラを楽しんで来た。
 
 この時期は川も湖も全て凍ってしまっており、まさに白一色の世界である。
それでも、冬鳥達は海や林や雪原そして民家のフィーダーに群れ、厳しい寒さを凌いでいる。 フィンランド・ヘルシンキからフィンランド航空の国内便で北極圏の町イバロへ飛びそこで一泊する。 夜はさっそくオーロラを楽しむ。
 
   翌日、そこから車で鳥見をしながらノルウエー北東バランゲル半島の町バルデまで550キロを走る。
まず、イバロからE-75を北上、イナリ湖岸の町イナリを通りカーマネン村を過ぎるとドライブイン メ Neljan Tuulen Jupa メが出て来る。ここで温かいコーヒーを飲みながら庭のフィーダーに来るシベリアコガラ、アカオカケス、コベニヒワ等の北極種を見る。コベニヒワとベニヒワは混群で移動しており、非常に紛らわしく識別には苦労する。フィーダーにはこの他、ウソ、アオカワラヒワ、キアオジ、イスカ、シジュウカラ、アオガラ等も来るので大変賑やかである。
再び車に乗りさらに北上、やがてノルウエーとの国境ウツヨーキ村に着く、国境と言っても移民局や関税局のチェック等いっさいなし、スノーモービルが行き交うタナ川を渡りノルウエーに入る。川沿いを東へ走りタナ・ブルで再び橋を渡りバランゲル半島に入る。
国道890号線を北上Nuortit Sieidaの村を過ぎるあたりから道路の右側は切立つ断崖となり景色が一変する。 毎夏この断崖にシロハヤブサが営巣しており、幾つかの古い巣の跡が見られる。 断崖の真下で待つこと20分、オジロワシをチェイスィングしながらヒラヒラ飛ぶシロハヤブサをじっくりと見る。
890号線をタナ・ブルまで戻りE-75を東へ走る。Varngerbotnを過ぎる頃からバランゲルフィーヨルドが見えてくる。海岸沿の漁村バドゾー、エッケロイ、キベルグを過ぎ10キロも走るとSvartnesの村に入る、そこから2900メートル近い海底トンネルを潜ってヨーロッパ最北東端の港町バルデーに入る。
ここが明日から我々がバーディングをするベース基地となる。夜は吹雪となって、残念ながらオーロラは見れず。
 
 翌朝、ホテルで朝食をとっていると、目の前の雪原にユキホオジロ20羽程の群が飛んで来て餌とりを始める。半分以上はすでに夏羽である。 ホテル横の倉庫の窓棚にミツユビカモメが10組も営巣しており、繁殖行動前の賑やかな鳴き交わしは、まさに北国の光景。
バランゲル半島第一日目は海岸沿いをバランゲルフィヨルドの奥まで車を走らせながらの探鳥。ここは北極圏より400キロも北なのにメキシコ湾流という暖流のおかげで年間を通じて氷知らずであり、周辺の凍った海を避けてカモ類やウミガラス類が集まって来る所で有名。 バルデーの小さな港の中にも何百羽という群のホンケワタ、コケワタガモがおり手に取るほどの近くで贅沢に見られる。車で1時間程のバドゾーの港では500羽近いホンケワタガモの群に色鮮やかなケワタガモが混じっていて堪能出来た。
ツクシガモの営巣地で有名なネッセビー保護区はまだ厚い雪が湿地を覆っており、ツクシガモの姿は見えない。50羽程のムラサキハマシギが波打ち際で餌とりをしていた。
 
 バルデーでの2日目、小さな漁船に乗りペラジック・バーディング。 バルデーの港から20分程沖のホルネーヤ島のまわりで船上から極北の水鳥を見る。
物凄い数のウミガラス、ハシブトウミガラス、オオハシウミガラス、ニシツノメドリ、ハジロウミバト、ヨーロッパヒメウ等を観察する。冬の海で波は高く、木の葉のように大きく揺れる小船であったが2時間少々のペラジックは、北の水鳥しかもその数の多さに圧倒される程迫力満点のバーディングであった。
午後はバルデーの港町の魚専門レストランでゆっくりとスカンジナビアの魚料理と地ビールを楽しみながら、昼暗い吹雪の北国の港町を窓から眺める。
 
 3日目は再びバランゲルフィヨルドの海岸沿いで水鳥を見たり、木が一本もない雪原に群れているカラフトライチョウの写真を撮ったりする。 夜は久しぶりの晴天になり、オーロラをたっぷりと楽しむ。
 
 4日目楽しかったバランゲル半島をあとにしてフィンランドへもどる。
全部で8日間の旅であったが、真冬という季節でありながら道路はよく整備されており、宿泊した宿も快適で大変楽に北極圏の冬鳥たちを見ることが出来た。
日本では迷鳥のホンケワタガモや、北極圏より南にはめったに姿を現すことのないコケワタガモ等が、泊った宿の前の小さな港に大群で浮かんでおり真近に見ることが出来た。
また、夏は森に隠れて見にくい極北の小鳥たちも、この季節は警戒心も薄く、フィーダーにやって来るので写真も楽にとれた。 そして何と言っても夜は見事なオーロラが見られるのが大変魅力であり、冬のラップランドも非常に楽しいスポットの一つと思われる。
 
( ニューヨーク在住 藤波 理一郎 )