「白夜のラップランド鳥見旅」
2001年6月

 6月中旬から7月初めにかけて、フィンランドとノルウエーの北極圏内で10日間程の鳥見旅をして来た。 全般的に天候に恵まれたが、風は非常に冷たくセーターにヤッケを着る冬並みの装備であった。 まさに白夜で、夜はいつまでも明るく10時11時でも鳥見が出来る。

まず、ヘルシンキから国内便でイバロへ入り、イバロ湖周辺の松やモミの林のトレールを歩きシベリアコガラ、アオガラ、アカオカケス、キレンジャク等を見て、湿地草原でディスプレー中のコシギを見た。 独特の馬が駆けてるような音に耳を傾け、短いディスプレー飛行を目で追うコシギ探しは大変にタフである。
道路際小川沿いの低い潅木の目の高さでオガワコマドリが盛んに囀っているのをじっくりと見る。小川の向こうの高い梢でコホオアカが鳴いおり簡単に見つける事が出来る。

翌日は国道4号線を車で北上、ウツヨーキで国境を越えてノルウエーに入る。バランゲル半島の西側 Rt.890 を北上、タナ川にそそり立つ断崖でシロハヤブサが営巣をしており、2羽の雛を道路から見た後さらに北上しRt.891に入り走り続けると、小高いツンドラの平原となる。 点在する小さな池にはオオハム、アビが泳いでおり、アカエリヒレアシシギもたくさんいる。雪が所々残っている緑の地衣に覆われたツンドラは、ラズベリーの白い花や黄色、ピンク色の高山植物が一面に咲いており、その中を子連れのヨーロッパムナグロとオオソリハシシギが雛を庇うように歩いている。ツメナガホオジロ、ベニヒワ、コベニヒワの囀りが静寂を破り響き渡る。時々足元から飛び立つカラフトライチョウの音に驚かされる。 コバシチドリやクロトウゾクカモメ、シロハラトウゾクカモメが抱卵中で、オスが目の高さをゆっくり行ったり来たりしながら長い尾を流して飛ぶ姿は実に美しい。
夕方になりツンドラ平原を後にして、バランゲル半島の東側へ車を走らせ、漁港の町バルデーに宿をとり翌日からの探鳥にそなえ早寝をする。

バランゲル・フィーヨルドでの鳥見第一日目はノルウエーの最北東端ハムニングベルグへ行く。 海岸に打ち寄せられてる海藻の間で餌獲りに夢中のエリマキシギの群を幾つも見る。とてもシギとは思えない赤茶や白黒のふさふさした襟巻きは実に見事である。ホンケワタガモやコケワタガモの子連れ、数は少ないがケワタガモも真近に見られる。海の上をシロカツオドリ、ヒメカモメ、シロカモメ等とすごい数のミツユビカモメが飛んでいく。 海岸縁の草地ではユキホオジロが囀り、ムネアカタヒバリが虫を咥えて雛に与えている姿も見られる。 静かなのんびりとした初夏の穏やかな北極海の海辺で、長い影を作る弱い日差しを浴びながら、一日北国の鳥を眺め楽しむ。

バルデーでの二日目は小船に乗って15分の沖合いにあるホルネーヤ島海鳥繁殖保護区へ行く。 島へ近づくにつれ、海上に浮かんでいるのや頭上を飛んでいる海鳥の数の凄さに圧倒される。 島に上陸して巌棚に沿って昇っていくトレールを歩く。何十万羽と思われるニシツノメドリ、足元や周りの岩の上、頭上すれすれに飛んで来る等とにかくうじゃうじゃいる。 人を恐れないのでバカチョンカメラでもそのひょうきんな可愛い姿を思う存分撮れる。
その他にもオオハシウミガラス、ハシブトウミガラス、ウミガラス、ハジロウミバト等やヨーロッパヒメウが営巣しており物凄い数である。 海鳥の鳴き声に包まれ、ニシツノメドリやウミガラス等に囲まれて、北極海の冷たそうな海とフィーヨルドを一日眺めていると不思議に心が落ち着いて旅の疲れが和らぐ。
後半は キベルグ、バドソー島、ネッサビー自然保護区等をまわり、北極圏に棲息・営巣する鳥達を中心に102種類を見る事が出来た。

人や車がほとんどない広々とした豊かな自然で、ゆったりと鳥を真近かに見れた初夏の ラップランドの旅は本当に満足出来るものとなった。

( ニューヨーク在住 藤波 理一郎 )