2日目、早朝さっそくロッジ裏庭にケツアールの♂♀が現れる。静かに小枝に止まって鳴く姿、木の洞を突っつく仕種、アグアカティージョ(アボカドの一種)の実をとって食べる姿など、たっぷりと2時間ほど堪能した。午後はサベグレ川沿いを歩きながらの探鳥、急流の岩場で餌採りに夢中なカトリタイランチョウやメキシコカワガラス、巣材に使う馬の毛を漁っているノドアカアメリカムシクイ、周囲のカシ林で枝移りするドングリキツツキ、フサボウシハエトリ、ホオグロアメリカムシクイ、高地の鳥であるオナガレンジャクモドキ、アカビタイカラシモズ、ハナサシミツドリなどを楽しむ。 ロッジのフィーダーには数多くのハチドリ類が訪れる。ラウンジでゆっくりビールを飲みながらミドリ、アオノド、コスタリカノドジロフトオ、バラエリフトオ、ハイオシロメジリ等の美しいハチドリを手にとるような近距離で見ることが出来る。ボーと花と鳥だけの世界に浸れるひと時でもある。
3日目、サベグレ川渓流沿いの険しい山道を車でパンアメリカンハイウエイまで上がる。
途中4ヶ所ケツアールが見られる所があり車を止めて探鳥、アボカドの実を採っては長い尾をヒラヒラさせて飛ぶケツアールを心行くまで見る。こうしたケツアールの群が谷あいを飛ぶさまはまさに優雅のひと言につきる。 サベグレは過去5回訪れているが、ケツアールは必ず見れているので、ここはコスタリカでも彼らに会える確立の高いスポットであろう。ミヤマヒタキモドキにモッビングされながら枝移りするキバシミドリチュウハシ(彼らは他の鳥の卵を食べるらしく嫌がられている)や、低潅木でゴソゴソ餌とりする見つけにくいクロキモモシトド等が比較的楽に見れるのもここサベグレである。
パンアメリカンハイウエイに入って南下、標高3,300メートルのパラモに上がる。高山鳥でローカル種のミヤマユキヒメドリ、ペルノピアの花に集まるハシナガシトド、ここパラモでしか見られない笹に似た"Chouquea"の小枝で盛んに囀るヤブミソサザイ、抱卵中のヒノドハチドリなどを見る。また、ここは色々な種類の高山植物の花が咲いていてとても楽しい。
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| タラマンガ山岳地帯のパラモ(標高3,300m) ミヤマユキヒメドリ、ハシナガシトド、ヤブミソサザイ、ヒノドハチドリ等山岳種が見られる。
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4日目、ケツアールや山岳種をたっぷりと楽しんだサベグレをいよいよ後にして、国道2号線に戻り北上、サンホセを通過して車は西へ向きを変える。
途中オロピナ村で子連れのナマケモノとシロクロヒナフクロウを見て幾つかの峠を越える。やがて太平洋が見え始めるとニコヤ湾も間近かである。 後半の宿泊所をカララ生物保護区に最も近いビジャラパスホテルにとる。 夕方たくさんのワニ(クロッコダイル)が泳ぐリオグランデ・タルコレス川で探鳥。アメリカトキコウ、アメリカレンカク、リュウキュウガモ、クロエリセイタカシギなどの水鳥やチマンゴカラカラやエンビタイランチョウなどを見る。 日の入りで真っ赤に染まる夕空をキホオボウシインコ、キビタイボウシインコやコアメリカヨタカなどの群が飛んで行く。
5日目、早朝"Jungle Crocodile Safari"と称する小型船で川を下りながらの探鳥。まるで白い花が咲いているようなカッショクペリカンの鈴なりになっている木々、クビワヤマセミやミドリヤマセミが水辺の低い枝に止まっている静かな朝の光景、船の周りを前後左右に飛び回るシロオビミドリツバメ、上空を低く旋回するアメリカグンカンドリ、ワライハヤブサやセイタカノスリ、水辺のマングローブにひっそりと佇むヒロハシサギなどを楽しむ。
午後は真夏のように暑いカララ保護区のトレール歩きをする。ギャーギャー大きな声を出して飛び回る赤青黄色の派手なコンゴウインコ、ハキリアリを追ってカオグロアリツグミやシロボシクロアリモズなどが徘徊する。薄暗い熱帯林のトレールを青い金属光沢のモルフォチョウが飛び回り、カオジロザルの群れが直ぐ目の前の枝まで出て来てこちらをじっと睨んでいる、また、森林の奥からこちらに向って来るホエザルの何とも言えない大きな声が響きわたってくる。 ミドリキヌバネドリ、ヒメキヌバネドリやアカオキリハシ等が低い枝にじっと止まっている、また、高い木のキャヌピーを歩くカンムリシャクケイ、木の葉に見え隠れするオウギタイランチョウなども楽しめる。 花から花をホバリングしながら蜜を吸うオウゴンサファイヤハチドリやスミレセンニョハチドリ、大きな木の実をほおばっているニショクキムネオオハシの群も間近な枝にいる。赤い翅のドクチョウやトンボマダラ、フクロウチョウ等の珍しい昆虫も見られる。 激しい縄張り争いをしているハナグマを見ながら、すっかり暗くなった保護区を後にする。
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| 太平洋側カララのリオグランデ・タルコレス川の夕焼。 ワニ(クロコダイル)が泳ぎ、塒へ帰るコンゴウインコの群れが上空を飛んでいく。
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6日目、早朝から午前にかけて、宿泊ロッジ内で今回の旅最後の探鳥。小川が流れる熱帯雨林のトレールを歩きながらマイコドリを探す。枝から枝を飛び回っているコンゴウインコの群に見とれていると、パチパチという平手を叩くような音がすぐ側で聞こえて来るので目を凝らす。何とオレンジシロエリマイコドリが羽を上部で打ち合わせて音を出しながらディスプレーをしている。そして、口笛で真似するスズメフクロウの鳴き声に反応して、図鑑の表紙にも載っているコスタリカを代表する"Manakin"、オナガセアオマイコドリが林の奥から出て来る。長い尾、青い背中と赤い頭が朝日に当たって実に美しい。
小さいが派手な色で大変に魅力的なマイコドリを最後にコスタリカの探鳥を終える。
北海道よりも小さな国コスタリカは、政府が観光に力を入れているところであり、国立公園や自然保護区も大変多くまさに野生動物の宝庫、特に鳥は880種と北米大陸全体の種類数にほぼ等しい。
北米やヨーロッパからの観光客も多く来るので、ホテルはかなりしっかりしていて清潔で安心できる。 自然環境は熱帯雨林、熱帯雲霧林、熱帯乾燥林、サバンナ草原、マングローブ、沼沢林と多様である。 また、カリブ海と太平洋の二つの海に挟まれていて自然を複雑化している。この国への旅はぜひゆっくりとした滞在型で、色々な自然を満喫してもらいたい。
(2004年1月 藤波 理一郎記)
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