春のセントラルパーク =その1=
(2002年4月18日)


 暖冬で雪らしい雪も降らずに春になってしまったニューヨーク。
4月初めにサクラ、ナシ、マグノリアが一度に咲いてしまい、メキシコマシコ、ショウジョウコウカンチョウ、マネシツグミ、ウタスズメ等が盛んに囀っている。
大都会の公園、そして春の渡り鳥のメッカ、セントラルパークにも春が訪れた。
中南米やカリブ海の島で冬を過ごしたアメリカムシクイを中心とする沢山の夏鳥達(ソングバード)が、毎年北へ上がって行く途中この公園に立ち寄ってくれる。
全米で55種類程見られるアメリカムシクイの内、何と36種類もが通っていくので、 この公園は「北米渡り鳥十大スポット」の一つとなっている。
すでに早い渡りのブユムシクイ、マツアメリカムシクイ、ヤシアメリカムシクイ、キタミズツグミ等がやって来ている。 一年ぶりに見るヤシアメリカムシクイの黄色い胸と腹、 そして茶色の帽子を被ったかわいい姿は、正に春の喜びを運んでくれる使者である。
アメリカムシクイ達が登場すると、待ちかねたようにニューヨークのバーダー達が公園に集まり始め、一年ぶりの再会を喜び合う。これも毎年見られる春の楽しい光景である。
5月中旬この公園の春のピーク日ともなると、人気者のオウゴン、キンバネ、クリイロ、ズグロ、キマユ、ミズイロ、ホオアカ等のアメリカムシクイ達が次から次に現れ、愛くるしい姿で我々を魅了してくれる。
 
 ところで、この冬この公園では小さなフクロウを見るのにバーダー達が大騒ぎをした。
ニューヨーク市公園局が野生生物管理プログラムの一環として、1998年の6羽に続いて昨年9月に18羽の一歳未満の若いアメリカオオコノハズク(Eastern Screech-Owl)を公園に放鳥した。昔、この公園でごく普通に見られたこの小さなフクロウ、1955年を最後にその姿は公園から消えてしまっていた。
彼らに再び公園に住み着いてもらおうと、昨年小さな送信装置を付けられ放されたもので、 途中一部の送信装置がうまく働かなくなったり、4羽が死んでしまったりしたアクシデントもあったが、どうやら彼らはこの公園を気に入ったらしく、何羽かはそれぞれの行動圏作りを始めているようであるし、また何羽かには求愛行動が見られるまでになって来ていた。そしてついにこの春その内の一番が2羽の雛を育てているのを多くのバーダーが確認。
公園では何と50数年ぶりの営巣と育雛の記録となった。
何とか彼らの巣作りや子育てが上手く行き、再びセントラルパークの留鳥となってくれる事を私を含めニューヨーク子達は願っている。 このアメリカオオコノハズクのニュースは地元紙ニューヨークタイムズにも盛んに採り上げられ、今ではすっかり町の人気者となった。 来年も又この時期に毎晩オス・メスが鳴き合い、幾つかのカップルが誕生するのを期待したい。
 
(ニューヨーク在住 藤波 理一郎 )