「ニューヨーク各地の冬鳥」
( 2002年1月)


 ニューヨーク・セントラルパークもすっかり木の葉が落ちて、バーダーの姿も少なく公園はひっそりとしている。
今年は大変な暖冬で雪の降る日が少なく、冬鳥達にとっては餌採りが楽であろう。 例年、日中の気温が零下2―3度からプラス2―3度の寒さなのに、ここのところ17―18度近くにも上がる温かさで、まだ冬眠しているはずのヘビやカメが庭に姿をみせている。 青い草の芽も顔を出して来て、チラホラ花も咲き始めている。
ブロンクスの植物園ではオオアメリカムシクイ、カマドムシクイ、ズアカアメリカムシクイ、カオグロアメリカムシクイ等が南へ移動せずに止まってこの暖冬を楽しんでいる。
毎年冬になるとフィーダーが掛けられるセントラルパークのアゼリアポンドのまわりにはセジロコゲラやシマセゲラのキツツキ達、エボシガラ、アメリカコガラ、カロライナコガラ、ムナジロゴジュウカラ、アメリカキバシリ等そして、ショウジョウコウカンチョウ、ワキアカトウヒチョウ、ユキヒメドリ、ノドジロシトド、メキシコマシコ等も集まって賑やかである。 温かい日など、ベンチに座ってリスにピーナツをやりながらのんびりこれらの鳥を見ているのも実に楽しい。
 
 昨年(2001年)の一年間、このセントラル・パークで見られた鳥は非公式であるが、213種類と発表されている。
珍しいところではアメリカヘビウ、そしてハチドリは通常ノドアカハチドリの一種類しか見られないのが、年末12月に北カリフォルニアからカナダにかけての山岳地帯で見られるアカフトオハチドリがコースを間違えたのか遅い渡りの途中にこの公園に寄ってくれた。
アメリカムシクイ類は東側では通常37種類と言われているが、昨年この公園では35種類も見る事が出来た。
その他は、やはり西側種であるニシフウキンチョウやマダラトウヒチョウ等も見られ、バーダー達にとって賑やかなセントラルパークの一年となったようである。
 
 そして、セントラルパークから北へ30分程上がったマンハッタンの北端にある公園には11月から12月にかけて北米で一番小さい鳥であるヒメハチドリが現れ、長期滞在をした為大騒ぎとなった。 このヒメハチドリは、本来カリフォルニアからカナダにかけての西側でしか見られない珍鳥であり、ニューヨークでは初記録となった。
南米へ渡る途中でコースを間違えたようであるが、何しろ例年なら冬が厳しいニューヨーク、「雪が降り気温が零下になる前に捕獲をして春まで保護飼育をするべきだ」、「フィーダーを付けなくてはならない」、「野生の鳥は自然にまかせれば良い」…・等さまざまな意見が色々な人から出され新聞紙上を賑わせたが、クリスマスを待たずに彼らは何時の間にか姿を消してしまった。 無事温かい南の国へたどり着いている事を祈る。
 
 一方冬の使者シロフクロウは今冬も2羽ケネディー国際空港のすぐ横ジョーンズビーチに現れバーダーを喜ばしている。
4月中旬、中南米やカリブの島々で冬を過ごしたアメリカムシクイやアカフウキンチョウ、ムネアカイカル等のソングバード達がセントラルパークに戻って来ると、又バーダー達が集まり、一年ぶりの再会の懐かしさに抱き合い、旧交を温め合いながらの楽しい春のウオークが始まる。 そんな北国の春がとても待ち遠しい今日この頃である。
 
(ニューヨーク在住 藤波 理一郎 )