「ピグミーエレファントやテングザルに会える北ボルネオ島」
2003年8月

 
 マレーシアの一州、北ボルネオ島サバ・サラワク地方はうっそうとした熱帯雨林に包まれ豊富な自然を誇る地域である。原生林に生息する極彩色の鳥やたくさんの獣達を求めてこの8月一週間程歩いてみた。
 
東京から直行便でサバ州の州都コタキナバルへ飛び、国内便に乗り換えサンダカンへ、そして車でスカウに入り二晩を過す。
スカウは低地熱帯雨林のまっただ中にあり、大きなキナバタンガン川がゆったりと蛇行している。毎日早朝から船外機の付いた小さいボートでこの川の支流をさかのぼりながら探鳥。テングザルの30頭程の群が木から木へジャンプして行く豪快な姿も目の前で楽に見られる。この川の流域だけでこの他にカニクイ、ブタオ、オナガ、レッドリーフモンキー等4種類のサルを見る事が出来る。
 
テングザルの住むキナバタンガン川支流

船からはジャングルの中の徒歩ではなかなか見られない鳥達もゆっくりと間近で見られる。カササギ、オナガ、シワコブ、ズグロ、ムジ等のサイチョウ類、コブハシコウや真紅のコシアカキヌバネドリ、カワリサンコウチョウもいる、カワセミやショウビン類も豊富に生息しておりコウハシショウビン、ナンヨウショウビン、ルリカワセミなどを観察。
  
また、ロッジ近くの川辺に水浴びに来ていたボルネオゾウ(ピグミーエレフアント)の家族7頭を見る。最近アジアゾウから独立した種類のゾウで2000頭近くしか生息しておらず、絶滅が心配されている貴重な動物である。午後はセピロックのオラウータン保護センターを訪れ、ジャングルの奥から餌目当てに出て来る野生のオラウータンを見る。
 
ボルネオゾウの家族

夕方ゴマントン洞窟へ行きジャワ、オオ、シロハラなどのアナツバメを見終わった頃、空はすっかり赤く夕焼けに染まる時刻となり、何十万というコウモリの群が空をめがけて飛び出して行く光景に目を奪われる。やがてコウモリダカが4羽程現れ空中ハンティングをしながら上手くコウモリを次から次へと捕まえるシーンとなり、まさに大自然の壮大な絵巻となる。
 
低地熱帯雨林の動物や鳥をじゅうぶん楽しんで、次の訪問地キナバル山国立公園へ移動する。ここは深い森がどこまでも続く高所熱帯雨林なので、標高の高い森林で山岳性の鳥を探す。早朝ロッジのまわりの街灯に集まる蛾をめがけてハイイロオウチュウ、ノドジロオウギビタキ、シラガオナガ、タンビヘキサンやヒムネスミゴロモなどが飛び回るのでテラスからゆっくりと見ることが出来る。
トレールはたくさんあるが、中でもキナバル山登山入り口からブキトウラートレールを下りながら歩く道は鳥影が濃いので楽しめる。サザイチメドリ、モズヒタキ、モリアオゲラ、スンダルリチョウ、ゴシキドリ類などを見ながら歩く、また、足元に咲く小さい野生のランの花は可憐で美しく目を潤してくれる。蒸し暑い低地熱帯雨林から涼しい山地まで高度変化による鳥や花の種類変化に魅され、貴重な動物達にも間近に会えるボルネオは大変魅力ある秘境である。
 
キナバル山国立公園
めずらしく全容を現したキナバル山

最後はコタキナバルの町へ戻り、タンシュンアルビーチの松林を塒とするコオオハナインコモドキ、オナガダルマインコなどを見た後、ビーチに並ぶ果物市場を覗きドリアンを食べながら最後の夜を過す。(6日間で観測された鳥種128種類。)
( ニューヨーク在住 藤波 理一郎記 2003年8月 )