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「初夏の米国アリゾナ鳥見旅」
( 2002年5月〜6月)


 人のような形をした巨大な柱サボテンの一種"Saguaro"の白い花がまだ咲いている5月末から6月にかけて、South - Eastern Arizonaをメキシコ種求めて歩き回った。
この時期は世界のバーダー達が集まると言われているように、ヨーロッパの色々な国の鳥屋さん達が来ており、彼らと鳥談議をしながら楽しい鳥見旅をする事が出来た。
しかし、今年のアリゾナは冬から100年ぶりと言われる異常乾燥気象が続き、あちらこちらで山火事が発生しており、飛行機からもその大きく広がった煙が見られた。
そしてついに、探鳥を始める直前、アリゾナ州政府は非常事態宣言を発動、国有林のあるほとんどの山とキャニオンを閉鎖してしまった。仕方なく急遽予定していた探鳥スポットを変更、山麓の砂漠・草原地帯を主に歩く事となってしまった。( なお、山火事は現在も燃え続けており、その規模は米国史上でもほとんど見たことのない程の広さとなり、自然破壊が心配され始めている。)それでも地元の愛鳥団体やバーダー達の情報を集めたり、キャニオン入山特別許可証を持っているガイドと一緒に回ってもらったりで、なんとか無事鳥見旅を続行出来た。この最悪の状況下にもかかわらず、メキシコ種を含めて160種類以上も見れたのは正に幸運であった。
 
 Tucsonについた最初の夜は町の北にあるCatalina State Parkへ行き夜行性の鳥を楽しむ。
車の前方ヘッドライトの光の中を乱舞するコアメリカヨタカ、頭上低く飛ぶプアーウィルヨタカを見た後、近くの枝で鳴き合うサボテンフクロウを懐中電灯で照らして見る。
Tucsonの町から30分ぐらいで行けるこの公園は、夕方から日没までの短い時間を軽く探鳥するのに最適なスポットである。
 
 2日目、本格的な鳥見開始、夜が明ける前にホテルを出てTucsonの西側にあるSaguaro National Monumentで夜明けを迎える。 等間隔で林立する柱サボテン(saguaro)の見ごたえ有る景観を楽しんだ後 Arizona-Sonora desert Museumに入る。園内はアリゾナ植物が全て植えられており、大小の池や川も流れているので砂漠の鳥達が集まるオアシスとなっている。サボテンミソサザイがそこらじゅうで営巣しており、サボテンの穴から出入りする サバクシマセゲラや柱サボテンの白い花に止まるハジロバト、やはり砂漠種のムネアカコウカンチョウ等がじっくりと見られる。 ハチドリの種類も非常に多く、特にコスタハチドリが営巣しているので写真を撮るチャンスがたくさんある。
アリゾナの探鳥は夜明けと共にスタートして、気温が35度近くになる11時頃には終わり午後はビールでも飲みながらシエスタ、そしてまた夕方遅く始めるのがコツで、ゆったりとした鳥見が大切。昼間の乾燥した暑さ(湿度8%―10%)は慣れない日本人には大変堪える。 夕方、宿泊したホテルの裏庭にさっそく州鳥のオオミチバシリが6羽程現れる。 長い尾を上げてスタスタ早足で歩く姿は実に滑稽であり楽しい被写体でもある。
 
 3日目5時の夜明けと共に探鳥開始、Madera Canyon Rd.を上がったPicnic Areaからクリークに沿ったトレールを歩く。この清流沿いのトレールは何時も水が豊富なので、早朝から午前中にかけては鳥の動きも活発である。ドングリキツツキやメキシコカケスの群が煩く鳴きながら樹間を飛び回る。 シロハラミソサザイのよく透る声を聞きながらチャバネアカゲラ、シマアカゲラの姿を追う。 遠方の高い梢に止まっているオビオバトをスコープで捉え、目の前の切り株に餌を持って出入りするシロガオエボシガラをじっくり観察、岩場に下りて餌とりに夢中のミドリトウヒチョウ、ズアカスズメモドキを楽しむ。
昨年泊ったSanta Rita Lodgeを再訪、フィーダーに集まる アオノド、アカヒゲ、ルリノドシロメジリ、ノドグロ等のハチドリを見る。 最後はProctor Roadの水場へ行き、水浴びや水飲みに次から次へと現れる ヒバリヒメドリ、ムラサキノジコ、ルリイカル、ナツフウキンチョウ、クロツキヒメハエトリ、ヒメキンヒワ、レンジャクモドキ等を見て朝の探鳥を終了。夕方、Santa Rita Lodge横の電柱の穴に営巣している サボテンフクロウを見る。
この電柱は毎年サボテンフクロウが営巣するので有名、今日も数台のカメラが並んでいた。
ウィッパーウイルヨタカの声を聞きながら宿へ引き上げる。
 
 4日目はメキシコとの国境町Nogalesの西にあるKino Spring Golf Clubの二つの池で探鳥。ここまで南下すると ベニタイランチョウが多くなる、池には10羽近いアカハシリュウキュウガモがおり、芦原には メグロハエトリ、オオアメリカムシクイ、スズメバト等がいる、上空低く ハイイロノスリが鳴きながら旋回していく。 ゴルフ場ティーグランドの木陰で涼んでいる オオミチバシリ一家を車の中から見ながらPatagoniaへ移動。 自分の家の庭に沢山のフィーダーを掛けてハチドリを呼び、一般のバーダー達にもその庭を開放している有名なPattonユs Houseへ行く。涼しい木陰の椅子でメキシコ種 スミレハチドリとインカバト、メグロトウヒチョウ等を見ながら暫し寛ぐ。 大きなオークの洞の中から黄色目でじっと我々を見ている アメリカオオコノハズクを覗く。 夕日の中、60羽程のヒメコンドルが低く旋回しており、やがて鷹柱となって舞い上っていく光景は迫力ある。
 
 5日目、6日目はPatagonia Sonoita Creek Preserve, Sunny-side / Scotia Canyon, の砂漠・牧草地帯の田舎道を砂漠固有種を求めて車を転がす。メキシコ種 ハシブトタイランチョウ、ウスチャメジロハエトリやキバシカッコウ、アカフウキンチョウ、ニシアメリカカケス、オビオノスリ等を見る。 砂漠固有種を探すには、井戸水汲み上げ用電力を供給する独特な形をしたアリゾナ風車を見つけ、その周りの水場に集まる鳥達を見るるのが有効。スミレミドリツバメ、ハマヒバリ、サメスズメモドキ、イナゴヒメドリ等が楽に見れる。
 
   7日目、非常事態宣言で一般のハイカーやバーダーが入山禁止となっているキャニオンへ特別入れる「許可書」を持った現地ガイドの友人にアテンドを依頼、待望のMiller CanyonとFrench Joe Canyonの奥深く入る事が出来た。この二つのキャニオンでしか見られないお目当のメキシコ種 ホノオフウキンチョウ、クリボウシアメリカムシクイをしっかりと堪能する。その外キャニオンならではの “ホセ・マリアー”と囀るミヤマヒタキモドキ、アカガオアメリカムシクイ、キバラブチタイランチョウ、アゴグロヒメドリ、ムナジロミソサザイ、ニシノドグロアメリカムシクイ等をたっぷりと楽しめた。宿泊所のMiller Canyon山麓にあるBeattyユs Ranchのコッテージは非常に静かで、泊り客は広いRanch内で自由に鳥見が出来るのでありがたい。朝夕水場やフィーダーに来る7種類程のハチドリやカタジロアメリカムシクイ、ノドグロハイアメリカムシクイ、ニシアメリカカケス等は簡単に写真が撮れる。また、毎夜コッテージの前の梢に来て盛んに鳴く ヒゲコノハズクを真近に見れるのも魅力。
 
 8日目、Sierra Vistaの牧草地では ウロコウズラやズアカカンムリウズラのペアーを何組も見れ、電線に止まるアメリカオオモズも見れる。San Pedro River沿いのトレールは水も豊富で鳥影が濃い、メキシコ種チャイロツキヒメハエトリもここでは必ず見られる。最後の探鳥日の早朝にRamsey Canyon Nature Conservancyユs Preserveへ行く。ここは8月のハチドリの渡りで有名なスポットであるが、初夏は鳥影も薄くあまり良いスポットとは思えない。それでも他所では見れないメキシコ種ミミジロサファイアハチドリは毎年必ず見られるようである。夕方にはTucsonへ戻りCatalina State Parkで再度バーディングを楽しむ。サボテンに止まるソウゲンハヤブサやブッシュの中で鳴くアカハラツグミモドキを枝の間から垣間見て、砂の上で餌とりに夢中なチャバネスズメモドキをゆっくりと観察する。夕日に浮かぶSaguaroサボテン、その根元を早足に歩く オオミチバシリを見ながら、アリゾナ鳥見旅の全行程 ( 1,555 Km )を終える。
 
(ニューヨーク在住 藤波 理一郎 )